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「それもそうね、じゃねぇよ。もうあんなの御免だ。生きた心地がしなかった」
「ごめんなさい」
「ママ、悪いことしたの?」
幸太がダメだよと嗜めるような顔をして聞いてくる。
「うん。ちょっとね、ママ、間違えちゃった。大人なのにね」
「大丈夫だよ。史哉くん、優しいから許してくれるよ」
いい子いい子と幸太にまで背中を叩かれて、これではどちらが子どもかわからないなと苦笑する。史哉も同じことを思っていたのか、クツクツと声を立てて笑っていた。
「話はつけてきた。謝ってたよ……悪かったって」
圭の母は悪くない。孫だと信じていた子どもと血の繋がりがなかったと、裏切りがあったとわかれば普通平静ではいられない。けれど、もう自分のせいだとは言えなかった。そう言えば、今度は史哉に怒られそうな気がしたから。
「ありがとう……本当に。でもどうやって?」
圭の母親が素直に説得に応じるとは思えなかった。史哉に迷惑をかけてなければいいのだが。
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