第十五章

3/15
前へ
/215ページ
次へ
「それもそうね、じゃねぇよ。もうあんなの御免だ。生きた心地がしなかった」 「ごめんなさい」 「ママ、悪いことしたの?」  幸太がダメだよと嗜めるような顔をして聞いてくる。 「うん。ちょっとね、ママ、間違えちゃった。大人なのにね」 「大丈夫だよ。史哉くん、優しいから許してくれるよ」  いい子いい子と幸太にまで背中を叩かれて、これではどちらが子どもかわからないなと苦笑する。史哉も同じことを思っていたのか、クツクツと声を立てて笑っていた。 「話はつけてきた。謝ってたよ……悪かったって」  圭の母は悪くない。孫だと信じていた子どもと血の繋がりがなかったと、裏切りがあったとわかれば普通平静ではいられない。けれど、もう自分のせいだとは言えなかった。そう言えば、今度は史哉に怒られそうな気がしたから。 「ありがとう……本当に。でもどうやって?」  圭の母親が素直に説得に応じるとは思えなかった。史哉に迷惑をかけてなければいいのだが。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2336人が本棚に入れています
本棚に追加