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「融資実績上げてる期待のエリートだからな。本店への推薦状書いてやるから、娘と見合いでもしろって言われたんじゃないか?」
悔しそうに唇を尖らせる圭もまた、総合職入行で銀行内の法人営業部融資チームにいるエリートだ。人の良さそうな風貌で、少し下がった眉がまた彼を愛らしく見せているのだが、実直で落ち着いた雰囲気が営業に向いていたらしく、支店内でトップクラスの成績を収めている。
圭も彼も、本来であれば、静香が近づくことなどできない人だ。
彼らには静香のような一般職入社の行員にはわからない出世争いがあるのだろう。高卒入行で出世とは無縁のところにいる静香にまで彼らの噂が届くくらいだから、能力が高いのは確かだ。
「支店長に?」
「いや、まさか。本店の役員からって聞いた。こっちに引っ張ってやるからってことだろ?」
「なんで圭がそんなこと知ってるの?」
「俺らと同じ総合職入行の同期が本店にいるんだ。そいつに聞いた。四月の人事異動、中央支店の真嶋だってな」
ああ、やっぱり。
真嶋史哉も、静香と同じ支店で働く法人営業部融資チームのエリートだ。
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