第十五章

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「まぁ、大したことはしてない。二度と会いにも来ないそうだ。ただ、どうしてもお前たちの写真が欲しいと言っていた。圭はずいぶん実家には帰ってなかったからな。もしお前が許せるのなら、何枚か渡してやれないか?」 「それはもちろん、いいわ。でも、ほとんど私も幸太も写ってるけど、いいの?」 「お前と幸太も含めて、圭の幸せそうな顔が見たいんだろうよ。あの家は……長いこと冷え切ってるからな。それより、今日の午後には退院していいってことだから、そろそろ着替えよう」 「あ、うん」  静香が着替える間、史哉は幸太を連れてナーススーテーションへと挨拶に行っていた。荷物を持って、静香もナーススーテーションに向かう。 「あ、戸澤さん……退院、よかったです」  看護師たちの表情がどこか硬いのは、静香が自身で命を断とうとしたと知ってのことだろう。事情は話してはいないが、看護師たちの目がもう同じことはするなと訴えているような気がした。 「ご迷惑をおかけしました。ありがとうございます。もう大丈夫です」 「そうですか。退院おめでとうございます」  静香がそう言って頭を下げると、看護師たちもホッとしたのか笑みを向けてくれる。
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