2337人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ~腹減ったな。なにか食って帰るか」
「うん、お腹空いた~ママ、なに食べたい?」
別になんでもないことなのに、泣きそうになってしまった。こんな自分に史哉はまだ「帰ろう」そう言ってくれる。それがなによりも嬉しかった。
「なにがいいかな……」
グスッと鼻を鳴らすと、両側から手が繋がれる。小さな手と大きな手。
こんなにも静香を大事に思ってくれる人たちを置いていくところだったのだ。
(圭……ごめん、私……史哉と一緒にいても、いいかな。許してくれるかな……)
「ね、幸太……」
「うん?」
「ママさ。史哉くんと、ずっと一緒にいてもいい? このままずっと、一緒に暮らしてもいい?」
「僕も一緒?」
幸太は心配そうに静香と史哉の顔を交互に見つめる。もう史哉と過ごす場所が自分の家だと思っていた幸太にしてみれば、今更だったのだろう。
「当たり前だろ。幸太と三人でずっと一緒だ。もしかしたら、四人とか五人になるかもしれないぞ。な、静香?」
繋がれた手に力が込められる。四人か五人、なんて言葉の意味を考えて、静香の頬は真っ赤に染まる。キュッと指先を握られて心臓が破裂しそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!