第十五章

6/15
前へ
/215ページ
次へ
「史哉は本当にいいの? 私なんかで」 「なんかって言うなよ。俺はお前がいい。もう、あの時みたいな後悔はしたくない。俺たちは遠回りしすぎだ」 「うん、そうだね」  静香が手を握り返すと、隣を歩く幸太が太陽のような笑みを浮かべて溌剌と叫んだ。 「ねぇっ! いつ四人になるの? 僕に弟か妹ができるってこと? ねぇねぇ、いつっ?」 「いや……え、と、それは……」  まったくもうと史哉を睨むが、彼は悪びれなく「そのうちな」などと言っている。  史哉と歩む未来も、きっと幸せに包まれているだろう。 「お風呂、先にごめんね……あ、幸太寝かしつけてくれたの?」  静香がリビングへ行くと、本を手にした史哉が寝室から出てくるところだった。 「ああ、ちょっと早いけどな。昨夜遅かったからぐっすりだ」 「もう幸太とっくに一人で寝られるのに、史哉に甘えてるのね」
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2337人が本棚に入れています
本棚に追加