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保育園の年長あたりから、幸太は寝かしつけなくとも自分で部屋に行き眠るようになった。たまに甘えてくることはあったが、史哉と一緒に暮らし始めてからは毎日のように史哉に本を読んでもらったり、一緒に寝てもらったりしているから、よほど一緒にいられるのが嬉しいのだろう。
「いや、甘えてるのは俺だよ」
「え……?」
手を引かれてソファーに座らされる。湿気を含んだ髪を撫でられて、頬に彼の唇が触れた。それだけで静香は落ち着きをなくしてしまう。
「本音を言えば……圭に嫉妬してる。圭を愛してるお前ごと愛するなんて言っておいてなんだが、幸太の小さい頃を俺は知らないからな。毎日幸太との時間を作ることで、距離を縮めて、早く父親だと認められたかった」
「史哉……」
幸太に言ってもいいだろうか。圭とは血が繋がっていないこと。史哉が本当の父親であることを。ショックを受けはしないかと不安はあるが、いずれ言わなければならないことだ。
「幸太にはまだ言わなくていい。もう少し大きくなったら、俺から言うよ」
静香の不安を察したように史哉が言った。
「うん、わかった」
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