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敵わなくとも、圭を愛する彼女ごと包み込んでみせる。それが自分の愛し方だと、いつか圭に胸を張って言えるように。
「あ、史哉」
静香に呼ばれて顔を向けると、なぜか彼女が背伸びをして顔を近づけてくる。なにか言いたいことでもあるのかと耳を寄せれば、密やかに弾んだ声で告げられた。
「そろそろ……幸太に本当のお父さんだって、教えてあげて」
「ああ、でも……いいのか?」
「ん。だって、来年には弟か妹が産まれるんだもの。ね?」
「マジか」
「ん……」
ああ、嬉しいもんだな。
二人の子の父親になれるのだと、感慨深い思いが芽生える。
幸太は喜んでくれるだろうか。君には父親が二人いるんだよ、とそう告げたら。
「ずっと、お前たちを幸せにするよ」
そう告げると静香は目を瞬かせて、とんでもないという顔をした。
「もうとっくに幸せよ?」
了
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