◆第五章◆

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由紀子、いや、孝一は不思議な夢から目覚めた。鏡をみた私は・・・本当に孝一になってしまっていた。あの不思議な夢は事実だったんだろう。じゃあ、あのメールは一体誰が送っていたのだろうか?孝一の記憶や人格は私がいるかぎり戻らないのだろうか?顔を洗いに洗面台にむかった。顔は、好きだった孝一の顔だった。 『私が孝一の中でいるかぎりは、孝一は戻って来ないかもしれない。でもほんの少しだけ一緒にいたい。生きたい。』 ガチャ ドアが開く、孝一のお母さんだった。 『体の調子はもう良くなった?』 花瓶にお花を飾ってくれてる。 孝一のお母さんには私が孝一なんだろう。 『うん。今日は調子いいみたい』 私はこの日から、孝一になりきらなければと思った。まだ消えたくなかったんかもしれない、ずるいって思われてるかもしれないけど、まだやり残したことがあるのかもしれない。でもいつかは孝一の中から出て由紀子は消えちゃうよのかと思ったら悲しくなった。私の体はない。由紀子は消えてしまったんだ。それを受け入れるのはまだできていない。由紀子が死んじゃって家族は?一体どうなんだろう。メールは一体毎日誰が送っているの?孝一との約束を果たしていない。由紀子にはまだこの世に未練があるみたい。 主治医の先生がやってきた。孝一の腕や足を見てくれていた。 『傷も良くなってきてるし来週には退院かな。記憶も戻ってるみたいだし。学校にいけるといいね』先生は笑顔でそう答えた。
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