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お金が足りない
お財布の中を見て、楓は溜め息をついた。
「今月もまたやってしまった…… 」
いつもいつも、どうして足りなくなるんだろう。楓は頭を抱えた。
お給料日までは、まだ二週間以上もあるのに、お財布の中には数枚の千円札と小銭がパラパラ……
やり繰りが下手なのは、自分でもわかってる。6年前に亡くなった母から、
『あんたはいつもいつも、後でやるって言ってやらないんだから。寒苦鳥になるからね 』
寒苦鳥とは、インドのヒマラヤにすむという想像上の鳥で、夜は寒さに苦しみ朝になったらすみかを作ろうと思うのだが、朝になると暖かさから寒さを忘れて、すみかなど作っても仕方ないと考えを変えて、最後は凍えて死んでしまう。
母から色々とお説教をされたが、子供の頃のその話が一番怯え心に堪えていた……はず……なのに。
毎月繰り返しやってしまうのは、家計簿をつけずに、まだあるから大丈夫と変に自分に言い聞かせて、美味しい食べ物や欲しいものを購入してしまう結果なのである……
あぁ、困った。
銀行にある分は、カードの引き落としがあるから使えない。貯金無し。
「とりあえず、今月も100ローでしのぐとするか…… 」
バッグにお財布をしまって立ち上がり、戸棚と冷蔵庫をチェックする。
『あんたは、上辺だけ反省してるから繰り返すのよ!』
そんな母の声が聞こえたような気がした。
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