お金が足りない

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秋元楓(あきもとかえで)32歳、独身。30歳まで妹と同居していたが、その妹が一足先に!?結婚したので、今は気ままな独り暮らしだ。  都心から電車で1時間。最寄り駅から徒歩15分の2DKのアパートで、都心と比べると家賃は安いが、 妹と暮らしていた時は折半していたので、一人で払うとなると厳しいのだ…… 4年前に彼と別れて、それ以降浮いた話のひとつもない……無念。  冷蔵庫と戸棚を漁ってみるが、食べられる物が少ない。一人分は作るより買った方が安いと知り、それからはお弁当を買うことが増えた。無精で、買った野菜を使い回せず、ダメにしてばかりいた。やはり自炊した方が貯金できるだろうか?お給料が出た後で考えることにしよう。今はこのピンチを乗り越える方が先だ。 母のお説教が聞こえてきそうだ。 「カップ麺を買い込んでくるかな 」  洗面所の鏡で顔や髪をチェックしてからバッグを持ち、100ローへ買い物に出かける。と言っても、玄関を出て徒歩1分の所にあるのだからとても便利である。外階段を降りて、細い通路を抜けたら直ぐに着く。  今日は仕事が休みだったが、疲れから夕方近くまで寝てしまった。我ながら良く寝られるものだと思う。これを許してくれる男性でないと、結婚は無理かもしれないと気付き初めている。 「気持ちが沈んできた…… 」 気を取り直して、100ローの自動ドアを入った。カゴを持ち迷わずカップ麺のコーナーへ向かった。 「このカップ焼きそばも好きなんだ。買っちゃおう。後、こっちのも…… 」 「楓ちゃん? 」 後ろから、聞き覚えのある懐かしい声がした。
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