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後ろを振り返ると、小、中学で同級生だった小野寺弥生ちゃんが立っていた。小さな子供と手を繋いで、赤ちゃんを抱いている。
「やっぱり楓ちゃんだ。久しぶり!」
そう言って、ニッコリ微笑んだ。
弥生ちゃんは、元から可愛いらしい感じの子だった。もう結婚したのか……
その上、子供が二人も……
私は、さりげなくカゴを後ろに回し、顔をひきつらせながら、
「弥生ちゃん……だよね? 久しぶり」
「うん。出産の里帰りで 実家に帰って来てるの 」
「そうなんだ。あっ、結婚と出産おめでとうございます。二人も大変だね 」
弥生ちゃんは、一瞬顔を曇らせたが直ぐに笑顔をなった。何故だろう?
「私ね、まだ実家にいるから、今度お茶しようよ。集まれる子達と同窓会しない?」
「あっ、うん、そうだね」
すると、痺れを切らしたのか、赤ちゃんがグズリ始めた。ふにゃふにゃと泣いている。
「あっ、じゃあ今度、連絡するね 」
そう言って、子供の手を引いて100ローから出て行ってしまった。
「私、弥生ちゃんの電話番号知らないんだけど……まぁいいか。今、金欠だから多分参加できないし。旦那と子供の愚痴を延々と聞かされるのは、反応に困るのでちょっと勘弁してほしい…… 」
私にも結婚に対する憧れはあるのだが、回りで愚痴ばかり聞かされるので、最近は妄想結婚に浸っている。
はぁ-と溜め息ついた。
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