花の散るとき

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「それぞれが付き合って別れたんじゃね?」 「まだ選択肢出してないよ」 「はぁ?選択肢?」 それぞれ春夏秋冬の告白じみた花言葉を持つ花を贈っていたので、自分なりの答えを出したというのに恥ずかしい。 恥ずかしがる俺にはお構い無く選択肢が並べられた。 「1.A君とB君、2.B君とC君、3.C君とD君、4.D君とA君……5」 てっきり4までだと思っていた選択肢が続いたことに驚き、顔を上げた。 すると一旦選択肢を挙げるのを止めて俺に顔を寄せてくる。 その距離の近さに俺の心臓が速度を上げた。 「5.僕とお前」 まさかの選択肢に更に高鳴る俺の鼓動。 正直、俺はこいつが好きになっていた。 男が好きということはないが、こいつのことは何をされても大丈夫と思えるくらいには好きだ。 この三年間、真っ直ぐな想いを向けられてきた。 そんな暖かいところで一旦芽を出した俺の想いはあっという間に咲き誇る。 俺のことをこんなに思ってくれるこいつにそれを渡したいと思うのは必然だ。 だけどこいつに伝えないのは始まってしまえばいつか終わりが来るかもしれないと恐れているから。 始まってもないことを恐れる程、俺はこいつが好きなのだ。 それならば今の関係のまま、そのままならば終わりも始まりもない。 「バカなこと言ってないで早く帰るぞ!」 色々な想いを振りきるように目の前のこいつを押し退かす。 「いつだって真剣なのに…」 少し寂しそうなその声に少しだけ俺の心はざわざわとした。 このままこいつが俺のことを好きじゃなくなったなら、それは終わりよりももっと受け入れられないものなのではないだろうか。 俺の臆病が俺を後悔させることになるのではないだろうか。 「とにかく帰るぞ」 この帰り道、俺らは珍しく何も話さなかった。 今まで俺がどんなに流しても気にせず構ってきていたのに。 いつもとは違う時間が俺に警告してくる。 俺らの関係を始められる期限は今日までかもしれないと。 もうこいつの花は散り始めているのではないかと。
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