花の散るとき

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「じゃあまた明日」 気まずい雰囲気の中でもこいつはいつも通り家の前まで付いてきた。 こいつの家に帰るには少しだけ遠回りになるというのに『少しでも長くお前といたいから』と一緒に帰るときには必ずここまでくる。 最近ではお迎えまでしてくれていた。 「おい、ちょっと待てよ」 いつもは俺が入るまで見送るくせに早々に立ち去ろうとするあいつを呼び止めた。 別に見送りして欲しかったわけではない。 「どうかした?」 「お前、あの角んとこでちょっと待っとけ」 「ここじゃダメなの?」 「いいからそこの角!」 それだけ伝えて俺は店の中へと入っていった。 入るとすぐに作業台にいる母さんに声をかけられる。 「おかえりー」 「ただいま。母さん、花一本だけ持ってっていい?」 「何で?」 「…何でも。後、今日店番しなくていい?」 「何で?」 「…ちょっと用事が入るかもだから」 「まぁ、いいわよ」 とりあえず聞きたいことだけ確認すると丁度良く母さんは家の奥へと入っていった。 その隙に作業台で選んだ一本の花に簡単なラッピングを施す。 完成するとあいつを待たせておいた角へと急いだ。 外に出て角を見たがあいつの姿は見当たらない。 もしかして帰ったのか? 走ってその角へと急ぐと曲がったところすぐに寄っ掛かるようにして立っていた。 慌てて花を後ろ手に隠す。 「そんな急いでどうしたの?」 「お前、見えるとこで待ってろよ…」 「僕の姿が見えなくて不安だったんだ、可愛い」 俺の頭を軽くポンポンとしてくる。 そんなことにも照れと嬉しさを感じてこいつを見れずに目を伏せた。
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