花の散るとき

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「それで?何で赤いバラなの?」 家で聞くと言っていたはずの話は進み始めてすぐに始まった。 家に着いたらすぐに……ってことか? 家に着いてから恐らくするであろうことを想像して一人で自滅していると答えがこないことを不審に思ったこいつに顔を見られてしまった。 「何、顔を赤くしてるの?」 「な、何でもねーよ!」 「怪しい…まぁ、後でたっぷりね」 妖しく笑うこいつにときめくもすでに赤くなった俺の頬がそれ以上染まるでもなく、お陰で気付かれてはいないようだ。 「それで?答えは?」 「あ、あぁ…」 答えないと俺の想いは受け取って貰えないと言っていた。 だからと言って正直に…は苦手だ。 「…良く選ばれてるから」 良くわからないといった様子、当然だ。 わかると恥ずかしいから大事な部分は省かれているのだから。 満足できない答えでは認められないようだ。 視線で詳しい説明を求められる。 「あぁー、だから真剣に想いを伝えたいって人が選んでくんだよ、これを」 俺の顔は今日一日赤いままなのかもしれないとこの時に悟った。 ここまで落ち着くことのなかった顔が落ち着く状況が全く見えてこない。 「知ってる」 「は?」 「前にもそうオススメされたから」 確かに何度か同じように言った記憶はあるがこいつに薦めた記憶はない。 そもそもその助言をしてたのはこいつに会う前の俺だ。 それに俺ん家でこいつが買っていった花ならだいたい覚えているが、バラを手渡したことはなかった。 「お前は覚えてないかもしれないけど、僕達中学生の頃にも一度会ってるんだよ」 まさかの新事実発覚に素直に驚いた。 「僕は母親のお見舞いのための花を買いに来たっていうのに、お前には何故か僕が告白しに行く人に見えたらしい。『真剣に伝えたいって人はみんな赤いバラを選んでいくよ』って笑顔で僕に話し掛けてきて、僕がお見舞い用だと告げると今みたいに顔を真っ赤にして慌ててた」 こいつの思い出話でようやくその時のことを思い出した。 今でもその恥ずかしさを思い出せるレベルの何とか消し去った失敗談。 まさかここでその話を思い出させられることになるとは…
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