空に架かる見えない線路を走る エフ・バーン、都市を結んで地上を走るエス・バーン、地下を走るウー・バーン

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空に架かる見えない線路を走る エフ・バーン、都市を結んで地上を走るエス・バーン、地下を走るウー・バーン

   建物に囲まれたこのDer Hof(壺庭的空間な裏小広場)のから切り取られたように頭上に覗く夏の空は雲一つなくて、どこまでも、どこまでも、吸い込まれるように深く高くただ青く見渡す限りに広がっています。 一年で一番、心地よい季節。  小さいけれどよく手入れされたこのコンディトライの裏には運ぶのに大人4人掛りで器具を使って、やっとほど動かせるような、それは、それは、大きくて深いDer Blumentopf(植木鉢)が置いてあって、その中でローゼマリーの一番お気に入りの花Die Pfingstrosen(精霊降誕祭のバラ達:芍薬達)が、ちらほらと咲いています。   今年はDas Ostern(復活祭)が過ぎても雪が積もったり雨が多くていつもより気温が低めだったりして、かなり遅れて咲いたので、いまの季節でも咲き残っているのですね。  そよぐ風を感じながらミルクをなめていると突然ゴオォォォォォォォォンという音と共に、私とローゼマリーがお茶を飲んでいる裏庭のはるか上空を音速で走る長距離航空列車Die F-Bahn(エフ・バーン)Kurzform für(短縮系)Flugbahn(空列車)”が走りすぎていきます。  なに?  空を走る汽車が珍しいって? Aha So? (あぁ、そう?)   私たちの世界には空に架かる見えない線路を走るDie F-Bahn(エフ・バーン)、都市を結んで地上を走るDie S-Bahn (エス・バーン)、地下を走るDie U-Bahn(ウー・バーン)が規則正しく当たり前に行き交っているのですよ。  もっとも外国路線専用の航空列車Die F-Bahn(エフ・バーン)は、市民の足である地上都市列車のDie S-Bahn(エス・バーン)や、地下鉄のDie U-Bahn(ウー・バーン)に比べれば、ちょっとばかり特別で月に数回しか走るのを見ることはありませんから、確かに私からしてみても、珍しくはありますがね。  ちなみに私ラニイとローゼマリーは、まだDie F-Bahn(エフ・バーン)には乗ったことはありません。  だってね。  なんていっても、ものすごく運賃が高いのです空を走るこの電車…。  それに外国に行くためにはビザと旅券の申請をしないといけないでしょう?  Die Inter-Stadt-(地上を走るまあほぼ)Expres-Bahn (新幹線的な列車) (ISEB)で、行くことのできるDas reich (寓意譚)der Fabel(帝国)の国内と帝国の領地と陸続き橋続きの、その同盟国家ならば帝国及び同盟国旅券と言ってその申請は庶民も、その飼い猫も割と簡単な役所手続きで手に入るんですけどねぇ…おまけにビザは免除だし…。  でもF-Bahn(エフ・バーン)を使って行くような外国って、ほぼ100% Das reich (寓意譚)der Fabel(帝国)と、その同盟国家領域外の国だし、そうなるとものすごく大変で面倒臭いんですよ。  私は検疫とかもありますしね。  ビザと旅券の手続きだけでも、お役所に何回も通わないと行けないみたいな。  残念ながらそんな気軽に行けるものじゃありません。  まあ、一生に一度は乗ってみたいですけどね。  庶民と庶猫の夢ですわ…。    “Ist mir doch egal.(まあ…いいけど、) Schnurre(ゴロゴロ) Schnurre Miaaau.”(ニャアアアアアアアン。)  私、ラニイがそんなくだらない事を考えている間にも横に座っていたローゼマリーは午後の太陽の光に手をかざして、眩しそうに目を細めて抜けるような青空の真ん中を走るそのDie F-Bahn(エフ・バーン)を仰ぎ見てから私の方に向き直り、それから急に何か思いついたように空に向かって私を抱き上げてから嬉しそうに言いました。 「見て、ラニイ!なんか珍しい形のDie F-Bahn(エフ・バーン)だわ。機関車も客車も真っ黒で見たこともない金色の、あれは…何?丸い三枚の葉っぱかしら?大きな奇妙な形の紋章が、客車めいっぱいに描かれているわよ!どこかの国の特別列車かしら?奇妙で大胆な、模様みたい…に見えるけれど、それでも綺麗なことは綺麗ね…。どこの国から来たのかしら?高度を下げながら走っているってことは、中央駅に降りるのね。どんな人達が乗っているのかしら?」  私とローゼマリーの上空を滑るように急速に高度を下げながら走っていくあの航空列車の、おそらく到着駅であろう、Am-Main Hbf.(アム・マイン中央駅)Die F-Bahn(エフ・バーン)Die S-Bahn (エス・バーン)Die U-Bahn(ウー・バーン)(航空列車、地上都市列車、地下鉄)が接続するこの国一番の巨大中央駅。  その何本も複雑に絡み合う線路の先に現れるガラスと鉄骨でできた半円型のドーム駅舎は見るものを圧倒するほどの威圧感を放っていて、その真下で整然と規則正しく真横に何本も何本も、それから空中から地下へと縦に何層にも何層にも重なって並ぶ歩廊の連なりは見ているだけで目が回りそうで気が付くと、いくら猫でもいつの間にか迷子になってしまっているくらいですよ。  “Ist mir doch egal.(まあ…いいけど、) Schnurre(ゴロゴロ) Schnurre Miaaau.”(ニャアアアアアアアン)    So wie so(とにもかくにも)この世界中でも最も有名で大きなこの中央駅がある大都会Am-Main(アム・マイン)は、名高いDie Freie(帝国) Reichsstadt(自由都市)なのです。  ちなみに、私やローゼマリーの住むブリュネンシュタインの町は、Am-Main(アム・マイン・) Hbf.(ハオフトバンホーフ)からは、Die S-Bahn (地上都市電車)で大体1時間のところにあります。  「さあ、ラニイ満足した?そろそろ休憩も終わりよ。仕事に戻らないと」  あら、もうそんなに時間が経っていたのかしら?  ローゼマリーは私に向かって優しくそう言ってガーデンチェアの背もたれに掛けていた白いエプロンを再び身に着けると、私、ラ二イと空になった猫専用茶碗Die alte(デイ・アルテ・) Brunnenschüssel(ブリュウネンシュッセル)の古くて汚ったない猫専用茶碗を見比べて、にっこりとほほ笑んでからパタパタと慌ただしく、再びハンネローレの待つコンディトライのお店へ続くドアの向こうへと消えていきました。 47015a9c-6e5e-488e-870b-9f1bd5c5cfe8 写真は私物(無断転載は禁止) :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: “Kurzform für Flugbahn”(航空列車の短縮版) Die F-Bahn、Die S-Bahn、Die U-BahnのDie(ディ)はルビ上では省略させて頂いて居ます。あと、他にもちょこちょこそういうのが出て来ますのでよろしくお願い致します。 ÖÄÜßのウムラウト表示だと、ルビが着くのが難しいよう時もあるようなので、この物語内ではルビの必要なところはoe,ae,ue,ssで表示しています。
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