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友猫のNala【ナーラ】
さあ行きましょう。
Tönenger haus の地上階、ハンネローレとローゼマリーの営む Die Konditoreiを背にしてまっすぐに猫の足でも数歩進むと、そこはもう Kaiser AdolfPlatzです。
そして右手に Kellner-Str.が、街の皆が日曜日にミサに行く教会へと続いています。
左手には頭に6つの鐘の付いた王冠のような鐘楼を重そうに被った市庁舎が、熟れた林檎色の壁にシンプルな白い窓枠を並べて横たわっていますよ。
市庁舎に向かって左奥には Das Schiefe Hausが名前の通りに本当に、ゆがんだままに建っています。
この Das Schiefe Haus 壁が真っ黒に塗られた上に、その自慢のゆがみが猫にでも解るように、ゆがんだ梁の輪郭を白いチョークでなぞるように白く塗って、その中を濃い藍色で強調していますよ。
そして恥ずかしそうにならんだ窓達は、なんとも派手なオレンジの色で塗られ包丁を鍛冶で打つ様子の看板が目印として車庫の上に刻み込まれています。
この家には私の一番の友達猫の Nalaが住んでいるので私もよく遊びにいくのです。
特にお昼はローゼマリーもハンネローレも、お仕事をしていて忙しそうですし…。
ハンネローレは私に対して厳格にお店と仕事場に入ることを禁止していますから暇なときは、たいてい私はこのDas Schiefe HausのNalaのところへ遊びにいっているのです。
まあ、今日は散歩したい気分なのですけどね。
さて、言い忘れていましたが熟れた林檎色の壁の市庁舎は、お城に続く坂道の途中の一段高くなった敷地にあります。
Kaiser AdolfPlatz から領主様へのお城に続く道は坂と階段になっているのです。
お城は市街地より一段高くなった土地にあるのですよ。
市庁舎入り口の横手に数段ある階段を上ってそのまま短い多坂道を上ると、そこには庶民の住む町と領主の住むお城との境界である Das Kanzleitorが建っています。
この塔の建物の中心には門があり、その横は Die Pförtnerlogeとなっています。
Das Kanzleitorは、その建物自体が市街地と城との塀の役割もしていて、横に長く連なり、その内部は、お城で働く職員達の住居や穀物倉庫に監房に、あとこれは恐ろしい噂なのですが、どうやら拷問部屋までが、あるらしいとのこと。
そして基本的に市街地からは許可証か、お城への招待状を持った人間しか入れないことになっています。
人間はね。
ただ、官房塔には穀物倉庫があってネズミよけになると思われているのか猫は指の隙間から大目に見てもらっているようで、私ラニイや友猫の Nalaは Der Pförtnerのいる前でも割と自由にこの門を通り抜けることができるのですよ。
まあねぇ。
ハンネローレが私を飼いだした理由というのも、もともと小麦粉を沢山扱うコンディトライにネズミ達が寄り付かないようにするためという理由ですしね。
つまり猫という動物は働き者なのですよ。
だから、税金だって免除されているのです。
そこが犬より偉いところですよ、そうでしょ?
そうなのですよ!
“Ist mir doch egal. Schnurre Schnurre Miaaau.”
まあ、そうは言っても流石に堂々と門を通り抜けるのは、なんとなく後ろめたいので今は門のこちら側からお城の中を見るだけにしておきますね。
どうせ夜にはあのハリネズミのハンスを、お城の庭園の生垣の下まで送って行かないと行けないのだし。
Brunnenissyの領主様のお城は白壁に屋根に蒼黒色の上品な粘板岩で葺かれています。
陸橋を通って、お城の玄関部は上に紋章の象られた弁柄色のアーチ門になっています。
そしていくつもある部屋の窓と、すっきりした飾り梁は、やはり弁柄色で塗られています。
漆喰の白色と窓わくと玄関アーチと、飾り梁に塗られた弁柄色、そしてスレート屋根の黒色の、この三つだけの色で立てられたお城は、その前に広がる広大なDer Lustgartenの四季折々に咲き乱れる色取り取りの伯爵自慢の花々の色彩を、より一層に際立てる役目もしているのでしょう。
伯爵はこの庭に特に力を入れていらして高価な外国産の植物を自らで買いつけたり、庭園管理を専門の庭師はもちろんの事、植物学の教授にまでお願いするほどの熱の入れようです。
その甲斐もあってか、整然と幾何学模様に刈りそろえられた緑の生垣の間に咲く花々は本当に見るだけで心が洗われるように美しいのです。
ちなみにハリネズミハンスはこの生垣の下で、いつもは昼間寝て夜になるとゴソゴソと餌を探して動き回っているみたいですね。
本当に面倒臭いけど、あぁ、今日の夜には、あの哀れなはりねずみを、この庭まで無事に返してあげないといけないのだ。
夜になるとDas KanzleitorにはDer Nachtpförtner が付くのですけど、たいていはグッスリと椅子の上で眠っていますからね。
まあ、問題はありません。
しかし今日の門衛も、あんな目立つハリネズミが、のそのそ通るのを見落とすなんて、よっぽど今日のお城は大騒ぎだったに違いありません。
でも本当にいい匂い。
というのもね。
伯爵の奥様は殊の外、薔薇の花がお気に入りで世界中から美しい薔薇の花を集めているのですよ。
それはもう一重咲きに八重咲き様々な形状の花弁を持つ文字通りの薔薇色に赤に黄色に白色に紫に斑入りに、遺伝子の操作で出来たという真っ青や真っ黒な薔薇の花まで世界中の薔薇をここに集めたくらいの数です。
またその中には花や実が特に食用に適した種類の薔薇達もあって自慢のお城の庭の恵みを町の人々に御裾分け、という伯爵の御意向で、そういった薔薇の実は Die Apotehekeへと下賜されるのですが食用に適した種類の薔薇の花弁は私達のコンディトライへと下賜されるのですよ!
すごいでしょう?
ハンネローレはそんな薔薇の花弁から、Der Rosenzucker・ Der Rosenlikör ・
Der Rosensirup・Das Rosengelee(*10)などなどを作ってコンディトライのお店に並ぶ製菓の特別な材料にしているのですよ。
そして、最初にもお話した通り美しいお城の前お庭の横には、この町をある意味象徴している。
そう…あの禍々しい塔が建っています。
正直、この話題にはあんまり触れたくないので町の方へと戻りましょうね。
お城と町との境界Das Kanzleitorに背を向けて再び石の坂と階段を降りてKaiser AdolfPlatzに戻ります。
写真は私物(無断転載は禁止)
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参考引用文献
(十八)
Rosen a la carte
Die Delikatessen-Manufaktur
Layout NorbertHetkamp
Druck Hinckel Druck GmbH wertheim
Printed in Germany
ISBN-10:3-00-018711-1
ISBN-13:978-3-00-018711-7
(*10)
参考引用文献(十八)P67~P73 P106より参照。
das schife haus (ゆがんだお家)ですが、本当に歪んでいます。調べてみたら
(*1)Durchgreifende Änderungen der Fassade im 18. Jahrhundert, wobei sich nach dem Verlust der Diagonalverstrebungen (wg. Schaffung größerer und höherer Räume) das komplette Gefüge des Fachwerk-Holzskeletts verschoben hat.
18世紀に建築物の正面を広範囲にわたって変更した時に、大きな部屋と高い部屋が作成されたため、斜めの筋交いが失われた後、木材骨格・構造の骨格の完全な構造に変化が生じました。とあるので、初めは、まともに建てられていたようです。
****://www.idstein.de/Startseite/Tourismus/Stadtrundgang/Historische-Gebaeude/E1273.htm
(*1)上記URLより引用。
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