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「ちょっと待ってください、お姉様! 今朝は走りすぎです」
息がやや上がり気味の八重樫紅砂は、姉である白城鏡子に懇願した。
苗字が違うように、鏡子と紅砂は本当の姉妹ではない。
「このぐらいのロードで参ってしまうのかしらね、激辛アイドルは?」
鏡子はめずらしく軽口を叩いた。
公園というにはいささか狭い公園で呼吸を整えたりストレッチをしていると、すぐ横にのびる幅の広い道路をレアメタル掘削用の機材を載せた大型トレーラーや、万が一の場合に備えて救急車や装甲ホバークラフトがゆっくり走りながらエアロック・ゲートに飲み込まれては消えてゆく。まるで隊列には終わりが無いような長さで何台も何台も。
正多面体で構成されているジオデシック・ドーム群の外は、極地の氷を溶かすために上空に浮かんでいる巨大ミラー・パネルや、時間によってはフォボスやダイモスなどの衛星も目視できるだろう。
聖パルーシア女学院火星校では、守護天使制度を採用している。上級生は下級生の「姉」に、下級生は上級生の「妹」になり、お互いに聖パルーシア女学院院生にふさわしい、品行、品格を涵養しあうために。
それがこの制度の特徴だった。学生寮を選ぶ生徒が多いため、いきおい「姉妹」の関係はランダムで選ばれた同室の生徒同士で「姉妹」になるケースが多かった。
紅砂の場合もそうだった。
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