復讐に身を捧げた私と、そんな私を慕う後輩の話。

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 犬丸は犬のような男だった。百七十センチの私の頭一つ分小さい、きらきらした目をしている。誰からにも好かれ、誰にも柔和な態度を取っている男だ。一か月前に入門してきたものの、私は別室で基本鍛錬を積んでいるため――師範の配慮で、私はトレーニングルームという名の個室を与えられていた。――彼の噂は聞き及んでいても、実際目にするのは初めてだった。  「貴方は?」  「犬丸辰巳っす!」  「そう。……ま、いいわ。やりましょうか」  道場内で話題になっている男が、どれだけの実力を有するのかを確かめたいという意味合いも含め、私は彼との試合を承諾したのだ。  結論から言うと、私の圧勝だった。  試合開始とともに、直球で斬りかかってくる彼の動きは読みやすかった。逆に罠なのではないかと疑ってしまうほどにまっすぐで、簡単に私は彼の小手を打ちこむことができた。  ま、こんなものかと私は思う。所詮は入門一か月だ。  私に勝てるはずがない。  「出直してくることね。じゃ」  「ちょ、ちょっと待ってくれっす先輩!」  呼び止められるも、私は黙殺する。一分一秒も惜しいのだ、小者に付き合っている余裕なんてないのだ。  大抵、私に興味を持った奴は、圧倒的な実力差の前に去っていく。そして孤立していく。いつもの流れだし、改善するつもりもない。  犬丸に至ってもそうだろうな、と思っていたのだけれど。
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