復讐に身を捧げた私と、そんな私を慕う後輩の話。

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 あんな貧しい連中が一人二人死んだところで、どうだっていいだろう。  奴が刑務所にいた際に面会した時、殺した張本人の、ごついスキンヘッドの男がそう吐き捨てたのが、今思えば私を構成する全てを破壊した。  そして、数日後、奴は無罪釈放となった。金が欲しかったから殺したという動機を、司法は黙認したのだ。そういう訳なので、私は裁判官が大嫌いだ。  だから、決めた。  司法で裁こうとしないのなら、私が裁きを下してやる。  何をしてでも成り上がって、奴の死に顔を脳裏に焼き付けてやる。  ある意味ここで、平和に馴染んだ私は死んだ。  生まれたのは、非常で冷徹な、復讐鬼となった私だった。  十七歳  道場では、休み時間も潰し、睡眠時間を削り、ただひたすら鍛錬を積んだ。まさに憑りつかれているようだった、と後々に後輩に評価されるほどだった。  周囲の人間関係など作らず、淡々と実力を爆発的に伸ばす私に話しかける人はいなかったし、私だってそんなぬるま湯につかる人間なんかとつるむつもりはなかった。私が道場に入ってから孤立するのは、当然の帰結でもあった。  辛い日もあったし、風邪の日だって励んだ。
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