105人が本棚に入れています
本棚に追加
私はわざと情報を流した意図を聞きたかった。
「確かに情報は流した。しかし、風聞程度にだ。この風聞は後々、生かされることになる」
ベルーサ公は情報を流したことを素直に認めはしたが、理由までは教えてくれなかった。
「とにかく今はこの策は教えられない。だがこれが後々に勝つ方向に向かう。それまではどこか静かな場所で力を溜めておいて下さい」
ベルーサ公は私を必要としているが、今は隠しておきたい様だ。
――ここで反論しても無意味のようね。
「分かったわ。あなたに従います。だけどこれだけはお願い」
私は、了承すると共にある条件を突きつけた。
「初戦だけは見学させて頂戴。前線には出ず、大人しくしてるから」
私はベルーサ公の軍略を見たかった。
こんな機会は滅多にない。
するとベルーサ公は反対するどころかニヤリとほくそ笑んだ。
「だったら、少しだけ手伝って頂きましょう」
その後、ベルーサ公はヤーケン城の防についての策を提示した。
大広間にいた者は皆、息を飲んだ。
しかし室内は不穏な空気が流れた。
勝てるいう確証を得たというより、これで勝てるかどうか不安が募った。
かく言う私もそうであった。
しかし今はヴァルミア随一の軍略家を信じるしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!