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その刹那、負けず嫌いな私は「あ゛? そんなんやだわ」と、気づいたら呟いていた。すると、どうやら狭まっていたらしき視界がぶわっと開けた。
――ああ、そうだ
コンテストに落ちるのなんて、そんなの他のみんなだって何度も体験してる。それでも皆、投稿して、投稿して、投稿しまくっている。私よりたくさんやっている人も居る。私よりいっぱい落ちてる人だっている。私が今ここで何もかもを止めたら、その瞬間
「その人たちに負けたことになる」
何それ、嫌だ。いっぱいいるじゃん。
私めっちゃ負け組になるじゃん。
別に勝ち負けじゃないけどさ。
むしろ勝ち組どころか負け組であってるけどさ。
……なんか、めっちゃ悔しいじゃん
それだけじゃない。
今止めたら、今までの自分全部を否定することにもなる。
自信満々に書いていた私のすべてを否定して、今流した涙すらも否定することになる。
――悔し涙が出るほど真剣に書いてしまっていた事実を全部、否定することになる
ああ、バカだ。欲で埋め尽くされていると思っていたけど、結局はお金目的よりそっち。自分の好きを思いっきり書いて認めてほしかった。
プロになりたい、という気持ちが強かったことを自覚したくなかった
でも、私はその思いを抱いていた。
ど素人のくせに、だ。
その気持ちを全部誤魔化して私は自分の中でいっぱい言い訳していた。この結果を目の当たりにするまで、ずっとずっと言い訳していた。弱い気持ちに全部負けていた。
――負けていたんだ
「……もう、正直でいる」
抱いてしまったのなら認めよう、受け入れよう。
もう弱い気持ちに負けたくない、負けない。
そうだ、私の小説人生での戦いはまだまだこれからなんだから
「……よし」
私はパソコンの前に座る。そして、コンテストの主題を見る。次は……うん、これにしよう。物語が咄嗟に浮かんで思わず口元がにやける。そう、物語を思いついたその瞬間の快感が楽しい。最高に好き。大好き。
だから、私は今日も小説を書く
fin
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