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もつ煮コンビの春事情
ピピピピ、というアラームで目が覚めた。
「ン.........ぁ~あ......」
カーテンの隙間から見える朝日の眩しさに起き、ボリボリと頭を掻く。
「.........。」
携帯を見ると、緑色のライトがチカチカと点滅していた。誰かから連絡があったようだ。
「......だれだよ、」
画面をスワイプして、ロックを解除する。待ち受けにしているグラビアアイドルの顔を隠すように表示されているのは、俺の相棒の名前と、短いメッセージ。
"やべぇ"
「.........何がだよ」
ぼやいた直後に送られてきた満開の桜の写真に、思わず頬が緩んだ。
軽く朝食を摂り、歯を磨き、母親が買ってきた洗顔料で顔を洗い、校則違反と知りながら染めた金髪をワックスで整える。いつもと変わらない朝だが、外は桜が満開らしい。それだけで妙にワクワクしてしまうので、人間とは単純な生き物である。
「行ってきまーす」
母親はとっくに仕事に出掛けたので、俺はそれを良い事に引きこもろうとした.........のだが。
"その桜どこ?"
"学校前の河川敷。はよ来い"
綺麗な桜が見れるというなら、話は別だ。俺は薄っぺらい鞄を片手に、通学路を歩き始めた。
学校前の河川敷が見え始める。草の緑に、川の水色、そして桜のピンクがとても綺麗で、俺はため息をついた。
「.........ハンパねぇな」
風に乗って、花の甘い香りが運ばれてくる。足を止めて深呼吸をすると急に煙たさを感じ、俺は咳込んだ。
「ぐぇっ!?げほっ、げほっ、げほっ!!」
何だと思い河川敷を見ると、一筋の煙と"黒色"が見えた。俺は舌打ちをして、その"黒色"に大股で近付く。
「......にこちん!!!」
「んン?......あ、もっちゃん。はよぉ~」
「"はよぉ~"じゃねぇよ!煙草消せ!折角のムード台無しじゃねぇか!!」
「はぁ~?何が??」
「よっこいせ」と"黒色"が起き上がり、怒る俺を見上げた。
時代遅れのリーゼントヘアでキメた頭を掻く未成年喫煙者。こいつこそ、俺が今日、外に出るキッカケを作った相棒・尾鍋仁虎(通称・にこちん)である。
「お前、煙草吸うなよ!折角この雰囲気を味わってたのに!台無しだぜ!!」
「はぁ?あぁ、うん。わりぃ」
にこちんが、くぁ~っと大きな欠伸をして、煙草を靴底で押し消した。そして自分の横のスペースを叩き、俺に「まぁ座れよ」と促す。
「一緒に花見しよーぜ。もっちゃん」
「......花見中に煙草吸ったら殴るからな」
「絶対吸うなよ」と釘を刺してから、俺は大人しくにこちんの隣に座った。
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