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「......青春するのはいい事だ。しかしな?"学校に来るのも立派な青春"だと先生は考えるぞ」
「そっすか」
「ふ~ん」
「興味を持て。この馬鹿共」
生徒指導の教師が、持っていた名簿のファイルで俺たちの頭を叩いた。
「......で。なぁんでこうなるかな」
「もっちゃんのせいだぞ」
「......いや、お前だろ。」
放課後。授業を受けなかった罰として、俺たちは昇降口前の掃除をするよう言われた。ただ河川敷でダベっているだけなら良かったのに、にこちんが急に「あ。机の中にメロンパン入れっぱなしだった」と言い出し、学校に戻った所を生徒指導の教師に捕まったのだ。
「メロンパンなんてまたコンビニで買えばいいじゃねぇか」
「もったいないじゃん。賞味期限、明日までだしさ」
「......それでこんな事させられるんじゃ、何だかなぁ」
ため息をつき、竹ぼうきを動かす。ザリザリとコンクリートの地面をかじる音がして、砂ぼこりが舞う。
「つーか机の中にメロンパン入れとくなよ。昭和のツッパリかっつーの」
ザリザリと地面をかじりながら、にこちんにそう言うが、にこちんからの返事はない。
「......?」
にこちんの方を見ると、にこちんは地面にしゃがんで何かを見ている。
「...何してンだ?」
「え?あぁ、見ろよもっちゃん。蟻の行列だ」
「.....はぁ?」
言われて見た先には、確かに蟻の行列がいた。にこちんは無言でそれを見つめて、それから「ふぅ」と息を吐いた。
「......春だな。もっちゃん」
蟻の行列を見たまま、にこちんがそう言った。喧嘩が強いのに威張らず、いつもマイペースで"のほほん"としているにこちんの背中は広く、俺は視線を空に移した。
「......そうだな」
ざあ、と風が吹き、せっかく集めたホコリを散らかした。そして微かに香る甘い花の香りに、俺は鼻がムズムズした。
(やばい。花粉症じゃね?俺)
(大丈夫か?チューリップ買うか?)
(殺す気かこのニコチン中毒め)
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