もつ煮コンビの春事情

3/3

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 「......青春するのはいい事だ。しかしな?"学校に来るのも立派な青春"だと先生は考えるぞ」 「そっすか」 「ふ~ん」 「興味を持て。この馬鹿共」 生徒指導の教師が、持っていた名簿のファイルで俺たちの頭を叩いた。  「......で。なぁんでこうなるかな」 「もっちゃんのせいだぞ」 「......いや、お前だろ。」 放課後。授業を受けなかった罰として、俺たちは昇降口前の掃除をするよう言われた。ただ河川敷でダベっているだけなら良かったのに、にこちんが急に「あ。机の中にメロンパン入れっぱなしだった」と言い出し、学校に戻った所を生徒指導の教師に捕まったのだ。  「メロンパンなんてまたコンビニで買えばいいじゃねぇか」 「もったいないじゃん。賞味期限、明日までだしさ」 「......それでこんな事させられるんじゃ、何だかなぁ」 ため息をつき、竹ぼうきを動かす。ザリザリとコンクリートの地面をかじる音がして、砂ぼこりが舞う。  「つーか机の中にメロンパン入れとくなよ。昭和のツッパリかっつーの」 ザリザリと地面をかじりながら、にこちんにそう言うが、にこちんからの返事はない。 「......?」 にこちんの方を見ると、にこちんは地面にしゃがんで何かを見ている。 「...何してンだ?」 「え?あぁ、見ろよもっちゃん。蟻の行列だ」 「.....はぁ?」 言われて見た先には、確かに蟻の行列がいた。にこちんは無言でそれを見つめて、それから「ふぅ」と息を吐いた。 「......春だな。もっちゃん」 蟻の行列を見たまま、にこちんがそう言った。喧嘩が強いのに威張らず、いつもマイペースで"のほほん"としているにこちんの背中は広く、俺は視線を空に移した。 「......そうだな」 ざあ、と風が吹き、せっかく集めたホコリを散らかした。そして微かに香る甘い花の香りに、俺は鼻がムズムズした。 (やばい。花粉症じゃね?俺) (大丈夫か?チューリップ買うか?) (殺す気かこのニコチン中毒め)
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加