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「......つーわけで決闘だ"もつ煮コンビ"!!今日こそボッコボコにしてやる!」
この間ボコボコにした相手......手羽高校のリーダーが勢いよく宣言した。しかもいつの間にか付けられた変なコンビ名で呼ばれ、俺は笑いを堪えた。
「決闘も何も。そっちが勝手に絡んできて勝手に負けてンだろ?知らんがな」
「上等じゃねぇか!かかってこいやおらぁ!」
「.........はぁ、」
「だからなんでそうなんの?」とは言えず。勢いよく中指を立てるもっちゃんにため息をついた。
「決闘の場所は、この間の河川敷だ!今日こそ勝たせてもらうからなぁ!"もつ煮コンビ"!!」
「上等だぁ!今日こそ息の根ェ止めてやるわ!」
「ちょっ!ちょっと君たち!?君たちぃぃ!!!」
河川敷に向かって歩き出す手羽高校の集団についていくもっちゃんに向かって、教師が叫ぶ。しかしもっちゃんはそれを無視し、ズカズカと歩いていく。
「......はぁ~あ。し~~らね」
そしてその後ろを、俺も呆れながら着いていった。
「はっ!口ほどにもねぇ奴等だぜ!」
「......傍観者が何を言ってンだか」
ボコボコにされたもっちゃんが、河川敷から逃げ帰る奴等の背中に向かって吐き捨てた......が。奴等を逃げ帰らせたのは俺である。
「もっちゃん何もしてねぇじゃん」
「したじゃねぇか!殴ったぞ俺は!」
「たった2発じゃん......」
疲れた俺ともっちゃんは橋の下に座り、ふぅと息を吐いた。制服は土と血に汚れ「親に何を言われるのか......」と考えると背筋が凍った。
「......疲れたな」
「.........だな」
はぁ、と、もっちゃんが乱れた金髪をかきあげた。俺はポケットから煙草を取り出し、1本取り出して唇に挟んだ。"ココナッツフレーバー"なんてものに惹かれて買ってみたが、これがかなり美味い。おやつ代わりになりそうな程甘いフィルターを舐めると、もっちゃんの雰囲気が変わった。
「......にこちん」
「ん?どした......っっ!?」
俺を呼んだもっちゃんの方を見たら、突然、顎を掴まれた。顎を掴まれた衝撃で、火がついたままの煙草が地面に落ちる。
「はっ!?っちょ、何す.........ンっ!?」
まだ吸っていない煙草が地面に落ち、もったいなさに声を荒げた俺の唇が、もっちゃんの唇で塞がれた。
誤解がないよう言っておくが、俺とにこちんは相棒で親友だ。決して恋愛感情なんて持っていないし、そういう意味で「好きだ」と思った事はない。
それなのに、どうしてもその唇を塞ぎたくなった。フィルターを舐める赤い舌に、妙に背筋がゾクゾクしたのだ。
「.........ぁ?」
そして、現在に至る。俺とにこちんの唇の間には透明な糸が引き、にこちんは驚いた顔をして俺の顔を見ている。
「......何、すんだよ」
「.........じ......」
「......はぁ?」
「やっぱレモン味じゃ.........ねぇな」
「...............病院、行くか?」
「頭殴られてんじゃね?」と、にこちんが驚いた顔をして言い、俺たちの"はぢめてのキス"は無事に(?)終わったのであった。
(はぢめてのキスがココナッツ味っていう俺の気持ちを考えろ)
(知るか。俺なんて血の味だわ)
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