10人が本棚に入れています
本棚に追加
「ばぇ~っくしょい!!!!!!」
誰もいない家に、俺のバカでかいクシャミが響いた。父親は「天気がいいから」と釣りへ出かけ、母親と妹は買い物へ出掛けた。俺もどこかへ行こうと思ったが、流石に俺まで出掛けて、家を空っぽにしたらマズいだろう。
「あ"~.........ちくしょう。花粉か?」
窓の外を見ると、庭の木が折れんばかりに揺れている。これだけ風が強ければ、花粉も大量に舞っている事だろう.........。
(......桜、散っちゃうなぁ)
窓の外を見ながら煙草をくわえると、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
「......?」
気のせいかと思い動きを止めたが、何度もピンポンピンポンと鳴らされ、気のせいではないと分かった。
「......誰だよ」
部屋を出て階段を下りている間も、ピンポンピンポンとチャイムが喧しい。
「......聞こえてるっつーの」
そう吐き捨ててドアノブに手をかけ、少し乱暴に玄関のドアを開けた。
「はいはいはい、何ス......もっちゃん?」
「よぉ、にこちん。ちょっといいか?」
玄関を開けて立っていたのは、親友のもっちゃんだった。長い金髪を後ろで縛り、俺が「いらねぇから」とあげたジャージを着て、今にも壊れそうな便所サンダルを履いている。
「どした?宿題は写させねぇぞ」
「いや宿題やったんかよ。真面目かよ」
「あぁ?宿題はやるだろ。出さねぇけど」
「いや出せよ。出さないとダメだろあれは」
そんな事を玄関で言い合っていたら、近所のおばちゃんが買い物袋を片手にこちらを見て、嬉しそうにニコニコしていた。
「.........とりあえず入れ」
「お?おぅ、言われなくても邪魔するわ」
もっちゃんが「失礼しまぁ~す」と家の中に入ったので、俺はおばちゃんに頭を下げて玄関のドアを閉めた。
ドアが閉まる直前に、おばちゃんが"グッ!"と親指を立てたので、俺は「あ~、この誤解をどうしよう......」と考えた。
「で?どうしたんだよ急に」
「ん?おぅ、実はよぉ......にこちん」
カチカチと時計の針の音が響く。もっちゃんは床に胡座をかき、口をつけていたコップをテーブルに置いた。
「......ピアス、開けねぇか?」
「ぶっっっっふぉっっ!!??」
真剣な顔をして告げられた言葉に、俺は緑茶を吹き出した。
最初のコメントを投稿しよう!