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「さぁて......何をどうすりゃいいんだ?」
にこちんの部屋に帰り、さっそくピアッサーを開ける。にこちんは「買ったティッシュを物置へ運ぶから」と、まだ外にいる。
「えーっと?」
小さく折り畳まれた説明書を開き内容を読む。グダグダと書かれているが、つまりは「清潔な耳に開けろ」という事らしい。
「......どうした?チキったか?」
「はぁ!?ちげぇし!説明書読んでたんだし!」
部屋に入ってきたにこちんが、ニヤニヤしながらそんな事を言いやがった。別にチキってなんていない。これぐらいでチキったら、男が廃るというものだ。
「なんなら冷やすの持ってきてやろうか?」
「いらねぇっつーの!!」
にこちんが吠える俺の横に座り、俺が開封したピアッサーを手に取った。
「チキってねぇならとっとと開けようぜ?」
「うっ、うるせぇっ!言われなくても開けるっつーの!」
テーブルに説明書を叩きつけ、髪を耳にかける。にこちんは俺の方を向いて胡座をかき、誤爆しない程度の力で、ピアッサーをカチャカチャと動かしている。
「右と左どっちがいい?」
「......どっちでもいい」
「はいよ。じゃ、動くなよ~」
緊張で体温が上がった耳に、にこちんの冷たい手が触れる。
「つめたっ!」
「心が優しいから仕方ねぇな」
「......はぁ?」
そんなバカな会話をしながら俺の耳たぶの柔らかさを確かめた後、にこちんが軽くピアッサーをあてがった。
「いくぞ~......」
そう言ってにこちんが手に力を入れると、耳元で"ギギギ"とバネが軋む音がした。
「い.........っ」
バチンッ!と物凄く大きな音がして、耳がじんわりと熱くなった。僅かに痛みを感じ「あぁ、開いたのか」と実感する。
「...おぉ、開いた開いた。どう?いてぇ?」
「......ちょっといてぇ」
にこちんが恐る恐る耳に触れると、にこちんの爪とピアスが当たる"カチャ"という音が聞こえた。
「......ん。でもいいんじゃね?綺麗に開いたじゃん」
「おぉ......サンキュ」
綺麗に開けられて嬉しいのか、にこちんが俺の耳を軽く触りながら微笑んだ。
「じゃあ、次俺な」
「......ハンパなく緊張する」
「開ける側は痛くねぇから大丈夫だって」
そう言うとにこちんは俺に耳を見せ「ここな、ここ」と指さした。
「......ここ?」
「ん~、も~ちょい下......ん、そこそこ」
にこちんが「オッケー」と呟く。俺は震える手でピアッサーを握り、にこちんの耳に針を当てる。
「......ズレても文句言うなよ?」
「ズレるの前提かよ......まぁ言うつもりはねぇけどよ」
「とにかく頑張れ」とにこちんが笑う。
「......いくぞ~...」
ピアッサーを握る手に力を入れると、俺の時と同じようにバネが軋む音が聞こえた。
「.........ンっ、」
ガチャン!と大きな音がしたと同時に、にこちんの体が少しだけ震えた。
「......おぉ、」
ピアッサーを握る手を離すと、綺麗に貫通しているのが見え、俺は感動した。
「.......いてぇ?」
「いてぇ......っつーかうるせぇな、ソレ」
へへ、とにこちんが笑う。耳たぶにソッと触れてみると、俺の耳と同じで、じんわりと熱を持っていた。
「......。」
指先で耳たぶを撫でると、ピアスと擦れて"カチャ"と音がした。
「......開いたな」
「そうだな」
「.........良かった」
「語彙力ねぇのかよ」
「変な奴」と笑うにこちんに「うるせぇ」と笑い返すと、まだ熱を持った耳がじんわりと痛くなった。
(親に見つかって怒られたわ)
(ドンマイ、もっちゃん)
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