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大きくて節ばった手の感触。明らかに女性のものではないとわかる。
「待たせてしまってごめんね。…それで、その子たちは?」
「由良さん!?」
確信もないのについそう口にしながら振り返ると、そこには本当に由良さんがいた。
「ええっ、お兄さんもめっちゃイケメン!!…じゃなくて、私彼の袖にお茶溢しちゃって、弁償しようかなって!」
「そうそう!それでそのブランドそこに入ってるじゃん?だから、良かったらお兄さんも一緒にいきません?」
状況をどう説明しようか考えているうちに、話がどんどん進んでいく。
ふと、フリーズしている俺の、由良さんに掴まれていない方の手の拘束が解かれた。
その隙に由良さんの方へ引き込まれたかと思うと、彼は俺の肩を抱き寄せ、悪戯っぽく2人に笑いかける。
「ごめん、彼は今から僕と大切な用事があるから。」
言いながら、由良さんの指は俺のうなじを緩く擦る。その微かな刺激が伝播し、身体中が震えた。
「ね、行こっ!!」
「えっ、なんで?」
「いいから!!」
何かを察したように、片方の女子がもう1人の腕を掴んで、そそくさと立ち去って行く。
…やばい、腰、砕けそう…。
酷くドキドキして、周りのことを気にする余裕が無くなり、身体から自然と力が抜け、足元がよろけた。
「…んっ… 」
さらによろけた瞬間腰に手を添えられて、思わず変な声が漏れてしまう。
「ここじゃ落ち着かないね。入ろうか。」
由良さんはゆったりと微笑んで、俺と繋いでいる手を離すと、そのままカフェのあるビルの中に入って行った。
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