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#12 お坊ちゃまは初日の出を見る
翌朝、一行は飛行場へ居た。
「また飛行機・・・」
「結衣、大丈夫だよ」
機体の小さなプロペラのある飛行機である、これで石垣島まで渡る。
機体は凄い音と振動をさせながら、空中へ舞い上がった。
石垣島へは1時間掛からずと着いた、そこからは車で別荘う。
「着きましたよ」
車を降りた全員、公平以外は呆気に取られた、普通の豪邸と言われる家より大きかった。
玄関へ入るとメイドさんが3名控えていた。
この別荘が使われるときだけ働きに来る方達だ。
「公平様、道中お疲れ様でした」
「皆様もどうぞお上がりくださいませ、直ぐにお茶のご用意を致します」
「仁、今日の予定は?」
「今日は気温も24℃有りますし、羽織るものを持っていけばマリンスポーツも出来ると思います」
「分かった、プライベートビーチに用意しといて」
「かしこまりました」
流石に杏と梓を含めた4人は驚いた、建物から見える砂浜が全てプライベートビーチとは・・・
「公平、マリンスポーツって何やるんだ?」
杏が聞く。
「潜ろうと思ってるけど」
「私はテレビで見るような、水中バイクの後ろに乗って遊ぶのとか空飛ぶのが良いな」
梓が希望を言う。
「結衣と聡美は?」
「僕達は良く分からないから、お任せするよ」
「分かった、皆パーカーとか上に羽織るもの忘れないでね」
公平はそう言い、メイドの所へ行った。
「昼食はビーチで、そこの側に暖を取っておいてくれるかな」
「かしこまりました」
4人共意外だった、こういう時の公平ってテキパキしてるんだなと。
ビーチに出て来た5人、今日は温かい方だった。
仁が5人にライフジャケットを渡す。
女子は上に羽織ってるものを脱ぎそれを上から被る、4人共綺麗だった水着と合ってそろぞれの魅力がしっかり出ている。
「公平、あれ運転できるの?」
「うん」
「公平様は、小型船舶2級の免許をお持ちですからね」
「梓乗ってみる?」
「乗るー」
嬉しそうに答えた。
梓を前に座らせ、公平は後ろからハンドルを握り、アクセルをゆっくりと開いた。
公平と梓を見ながら結衣が少し震えながら言った。
「聡美、沖縄の冬って意外と寒いんだな」
「そうだね」
「2人共、滅多に来れないチャンス、遊んどかないと後悔するわよ」
杏が言うと、聡美が思い出したように答える。
「そうだった、生涯最初で最後の沖縄かも知れないんだ」
結衣も瞳を輝かせ始めた。
「そうだな、遊ばないと損だ」
結衣と聡美も、公平が遊んでる方へ向って走り出したのだった。
梓を下ろした公平は、バイクの後ろにバナナボートを取り付けた。
4人はそれに跨り、公平がバイクで引きながら走る、誰かが落ちたら止まり、再び跨ったら走り出す。
これで2時間位遊んだ。
疲れた4人は浜辺に戻り、暖の取ってある所で椅子に座り休憩をした。
「楽しいね」
梓が言うと、聡美も頷きながら同意した。
「本当に、これて良かったよ」
結衣が空を眺めながら感動していた。
石垣島の別荘では、お正月に向けお節料理が作られていた。
4人の女子も、公平のために参加中である。
「これ、甘すぎない?」
梓の作った栗金団を、結衣がつまみ食いをしたのである。
「そう? この位甘くないと、美味しく無いんじゃない?」
「まぁ、良いか美味しいは美味しいから」
結衣は自己完結した、こんな調子でお節料理が出来上がって行く。
肝心の公平は、何時もと変わらずに2階の自室でお昼寝中である。
大晦日の夕方、公平は階段を降りて来た、1階のリビングでは4人の女子達がトランプで遊んでいる。
「お早う」
公平は声を掛けながら、暖炉に近い所へ腰を下ろした。
「公平もトランプする?」
梓が声を掛けると公平は首を横に振った、まだ起きたばかりで気だるいのか、寝過ぎなのか分からないが、思考も余り良く回転していない感じだった。
「仁、初日の出は温泉で見ようか」
「かしこまりました」
これを聞いていた杏が、公平に質問をする。
「温泉って、この別荘のか?」
「ううん、少し車で走った所に海しか見え無い温泉があって、そこで初日の出が見れる」
「良いね公平君、僕はそういう神秘的なの好きなんだ」
聡美が意外な告白をする。
「初日の出を見ながら、温泉に浸かるってのも良いかもな」
結衣も楽しみにしてる様だ。
早めの夕食を済ませ、新年のカウントダウンを向かえながら、年越しそばを食べていた。
『明けまして御目出度う御座います』
無事に新年を向かえた、年末年始恒例の番組では、各国の新年状況を放送してた。
午前3時、5人は仁の運転する車で温泉へ向った。
「皆様着きました、私は車でお待ちしてますので、ゆっくりと楽しんで来て下さいませ」
「はーい」
「いってきまーす」
それぞれが足早に、女性更衣室の方へ歩いて行く、公平は男性更衣室で、大事な事を伝え忘れたのに気が付いた、混浴なので水着が必要なのだ。
「ま、大丈夫か」
一言呟き温泉へと入って行った、勿論水着を履いてである。
「混浴のため、水着の着用をお願いします」
杏が張り紙を読む、女子更衣室には4人の他に、3人の観光客が困っていた。
一応張り紙には、水着のない方は、レンタルの服をお使い下さいと書いてあるんだが、それが病院の患者が着るような形で、丈は少し長いものの上服しか無いのである、オマケに生地が薄い。
「せっかく来たんだし、寒いから着替えて温泉入りましょう」
梓が言いながら着替え始めた、それを合図に全員温泉に入る覚悟を決めた様だった。
「あの、僕達の連れで男子が一人居るんですが、害を与えたり不愉快な思いをさせる事は無いので安心して入って下さい」
聡美が他の観光客に事前と知らせとく、着替え終わった一行は温泉へ向った、公平はすでに湯に浸かり海を眺めていた。
他には人も居なく思ったより大きな広さなので、気にする事は無さそうだと他の観光客も安心して、湯を楽しみ始めた。
「公平、お待たせ」
杏の掛け声を答える様に、公平は皆の方へ振り向き頷いた。
「水着の事伝えるの忘れてた、ゴメン」
公平が誤り、温泉の縁に腰を掛けた。
「大事な事忘れやがって、自分はしっかり履いてるんだな」
文句を言いながら結衣は公平へ、お湯を浴びせた。
「ゴメン」
誤りながら顔を手で拭き、髪をオールバックにして水を払うと、杏と梓以外の娘全てが公平に魅了された、普段は目が半分位まで隠れてる、手入れのしていない髪を上げると中から出てきたのは、キリッとした眉毛、綺麗な二重まぶたで瞳が大きめの目、その間から1本真っ直ぐと伸びる鼻筋、それらのパーツが、耳から顎までの逆三角形型の輪郭に収まり、月夜に輝いて映し出されたのである。
一瞬の事だった、すぐに梓が公平の髪をワシャワシャすると、平凡な少年へと戻る。
「結衣、見た?」
「ああ、一瞬ドキッとした」
聡美も頷いた、他の観光客も幻でも見たかの様な顔で、温泉の脇のタイル床へ向う公平の背中を見つめていた。
「ああ、温かい」
公平は地熱で暖かくなってる床で寝転がり休憩をした、当然そのまま寝落ちて行くのであった。
「公平~ 起きろ」
「初日の出、見逃すぞ~」
杏が起こしに来た。
「有難う」
再び湯に浸かったと同時に、日の出が始まった、地平線の遥か彼方から登ってくる太陽、まさしく特等席での鑑賞だった。
初日の出を堪能した公平は既に満足した様だ。
「先に車に行ってる、ゆっくり楽しんで良いからね」
公平は湯を上がると男性更衣室へと向って行った。
「お連れさん、カッコイイのね」
公平が居なくなると、観光客の人達が話し掛けて来た、そこから少し公平の話、日常の世間話を楽しみながら女子達は車へ戻って来た。
「公平待たせたな」
杏は声を掛けるが、予想通り睡眠中であった。
別荘へと戻り、朝食にお雑煮とお節を頂く、公平としては帰るまでこのままの生活を続けたいのだが、女子達は少しでも遊びたい。
「明日は観光をしてみたいな」
聡美が興味有りげに言うと、全員頷く。
「1日あれば島1周できるから良いよ、仁車お願い」
「かしこまりました」
公平の思惑通りには、中々進まない様だ。
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