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#13 お坊ちゃまは新学期を迎える
翌日、石垣島観光に出掛けていた。
「仁、小瓶用意してくれた?」
仁は用意した、本当に小さな小瓶を彼女達4人に渡した。
「仁さんこれは?」
公平が足元から砂を拾い上げ、細かい中から星の形をした砂を見つけ、梓の小瓶に入れた。
4人は夢中になって、砂の中から星の形をした物を探しては小瓶へと入れて行った。
2時間位砂浜で楽しみ、昼食のサンドイッチを食べたら、次はカヌーをやろうと言う事で仁は車を走らせた。
公平は眠気に勝てず車で睡眠中、4人はそれぞれ1人用のカヌーに乗りガイドの人と一緒に漕ぎ始めた。
「あれが沖縄では有名なマングローブの木です」
「ああ、良くテレビで見るよね」
「ああ、実物を見ると結構大きいんだな」
聡美と結衣は感心している、梓と杏はゆっくりと説明を聞きながら付いて行くのであった。
誰も転覆する事も無く、無事に終えた4人は車に戻り良い思い出が出来たと、仁に報告してた。
夕方早めに別荘へ戻ると、公平はそのまま自室へ入って行った。
4人はおやつの代わりにお節料理を食べながら、明後日には東京へ帰らなければ行けない事を残念に話していた。
「公平~ 夕食だぞ」
「起きろ~」
「杏、有難う、でも要らないと伝えてくれるかな」
そう言うと公平は再び自室に籠もった、それを聞いた仁を含め4人は心配したが、疲れが出たのかなという事で話は解決し納得した、杏以外は・・・
深夜、公平の部屋へ忍び込む人物がいた。
「う、う~ん 誰?」
「私だよ」
「杏」
「体調悪そうだな」
「風邪引いたと思う」
「馬鹿だなぁ、無理して付き合ってさそういう時こそ、ハッキリ言わなければ行けない時じゃないか」
「ゴメン」
「良いよ、安心して寝ろ」
「でも、杏に伝染るから」
「大丈夫だよ、お前の風邪位じゃ、伝染りゃしないからさ」
「ありがとう、あ・ん・ず・・・」
公平はそのまま眠ってしまった。
杏はそっとベッドを出ると、濡れたタオルを持って再び公平のベッドへと入った。
公平はうなされながらも、杏の腰を引き寄せ、股の間に自分の足を入れ、胸に顔を埋め風邪と戦っていた。
「風邪引くと過激なんだな、間違いを起こしたく成っちゃうじゃないか・・・」
呟くと杏は、ずれたタオルの位置を戻しながら、公平を抱きしめたのだった。
「はぁ~ 良かった」
結衣は呟くと、聡美も握った手を離しながら頷く。
飛行機は無事に、東京の空港へ着陸したのだ、荷物を受け取り仁が車を止めた空港の駐車所へ向う。
公平の体調はすっかり良く成っていた。
沖縄から帰ってきた一行、杏はその日に寮へと帰って行った。
「明後日から学校ね」
「そうだね」
「また頑張ろうね」
「うん、何時も有難う」
公平は、梓を見つめながらお礼を言った。
新学期も始まり、日常の生活に戻った面々。
「公平~ 行くよ」
「梓、お早う」
「お早う、結衣と聡美も早く行きましょ」
「梓は今日も元気だな」
「それが梓君の良い所だもんね」
「仁、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ、皆様お気をつけて」
1月の寒い中、4人は学校へ向って歩き出した。
「公平、最近のお弁当箱は凄いのよ」
梓が得意げな顔をする。
「何が凄いの?」
「お昼まで、温かいご飯が冷めないのよ」
「そうなんだ、結衣と聡美にも、そのお弁当箱用意してあげようかな」
「公平、先に私へ感謝しなさいよね!」
梓が少し不貞腐れる。
「そうだったね、ゴメン何時も感謝してるんだよ」
「それなら良いけどさ」
午前中の授業も終わり、公平、梓、結衣、聡美で机を並べ昼食の準備をする。
「私も中に入れて貰っても良いかなぁ」
桃が少し恥ずかしそうに聞いてくる、勿論公平が好きで来ているのは、本人以外は知っている。
「良いよ」
「有難う」
嬉しそうに机を持ってくる桃、3人の女子は桃が公平の隣に机を置いたのが気に入らなかったが、公平が何も言わないなら、仕方がない事であると我慢をする。
「公平君のお弁当、美味しそうだね」
「うん、毎日梓が作ってくれるんだけど本当に美味しいよ」
梓が少し嬉し恥ずかしそうにする。
「私もね料理は結構得意なんだ、そのお弁当箱も一緒だよ」
桃が出したお弁当箱は、梓や公平と色違いな同じ物だった。
「今度、私も公平君にお弁当を作って来たいんだけど、良いかな?」
「桃、何言ってるの?」
流石に梓が止めに入る、しかし公平は桃にお願いをした。
「それなら、明日お願い」
「本当に? 有難う頑張って作って来るね」
「でも、なぜ俺にお弁当を作ってくれるの?」
公平は真面目に、不思議そうな顔をして聞いた。
「ええと・・・前、お父さんの解雇を、助けて貰った御礼がまだだったからよ」
「それなら気にしなくても良いのに」
「ううん、明日頑張って作ってくるから、ぜひ食べて欲しいな」
「分かった」
このやり取りを聞いている3人は、呆れて箸が止まってしまっていた。
事実、桃の顔は赤く火照っており、完全なアプローチなのだからしょうが無いのだろう。
「そうだ! 結衣と聡美も冬の間は、このお弁当箱が良いよ」
「寒い日に温かいお弁当は良いよな」
結衣も聡美も嬉しそうにする。
「帰ったら、仁に用意させるから」
「公平君、有難う」
聡美が感謝する。
「結衣と聡美は、公平君の家に住んでるのよね?」
「ああ、前に皆の前で話したけど、住む所が無くてね」
「僕達は本当に、公平君に感謝してるんだよ」
結衣と聡美が公平を見ながら言った。
「公平君は、結衣と聡美、どっちかと付き合ってたりするの? もしかして梓とか?」
桃がさり気なく、知りたい事の確信をついて来る。
「梓は恋人以上だし、結衣と聡美は友達以上、恋人未満かな」
「そうなんだ、桃はお友達になれてるよね?」
少し不安そうな顔で聞いている。
「うん、桃は友達以上だよ」
「良かった、本当は桃だけが勝手に思ってるのかもって、不安だったんだよね」
「大丈夫、桃は友達以上だからさ」
何時もとは違う雰囲気で昼食を終えた、梓、結衣、聡美は、それぞれ言葉に出来ないような、余りいい気持ちでは無い感情が生まれていた。
午後の授業も終わり、4人で教室を出ようとした所に桃が話しかけてくる。
「一度、公平君の家へ遊びに行ってみたかったんだけど、今日とか駄目かな?」
「良いよ」
「やったー ありがとう」
桃は大袈裟に飛び跳ねて喜んだ。
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