#14 お坊ちゃまはお泊り会をする

1/1
前へ
/35ページ
次へ

#14 お坊ちゃまはお泊り会をする

公平達は、桃を連れて屋敷に帰って来た。 「ただいま」 「お帰りなさいませ、皆様」 「初めまして、酒井桃と言います」 桃は丁寧なお辞儀をする。 「初めまして、公平様のお友達でございますね、私の事は仁とお呼び下さい」 「はい、以前教室でお会いしてます」 「クラスメイト様でしたか、どうぞお上がり下さい、直ぐにお茶のご用意を致します」 仁は嬉しそうに桃を促した。 「有難う御座います」 桃はリビングに通され、ドーナッツとコーヒーを出されていた、そこへ結衣と聡美が降りてくる。 「桃、随分大胆だな」 そう言いながら結衣と聡美も席に座る。 「何がかな?」 桃は遠慮なく答えを出す。 「こんにちは~」 「梓様、いらっしゃいませ」 「公平は?」 「まだ自室だと思われます」 「有難う」 梓は2階へ上がって行った。 結衣と聡美も、ドーナッツとコーヒーでおやつタイムである。 「公平君は降りて来ないの?」 桃が不思議そうに聞く、当たり前だろう普通は友達が遊びに来てたら、直ぐに顔を出すものである。 「公平君はきっと、昼寝してると思うよ」 「え?」 桃が驚く。 「仕方が無いのさ、マイペースで生きているのが公平なんだからね」 結衣や聡美は、すでに公平を理解し始めていた。 「梓は?」 桃が不安そうに聞く。 「公平と一緒に、昼寝してるんじゃないかな?」 「一緒にって、一緒のベッドで?」 「そうだよ」 聡美が普通に答える、桃が仁を見ると微笑みながら頷いた。 「結衣、聡美、確認したいんだけど、公平君と梓は付き合ってる訳では無いのよね?」 「ああ、あの2人は家族見たいなものなんだろうな」 結衣はあえて、自分達も公平の抱き枕に成ってる事が有る事は隠した。 「桃、ごめんね」 公平が梓と一緒に降りてきた時には、2時間経っていた。 「桃こそ、ごめんなさい」 「何で謝るの?」 「お昼寝するなんて知らなかったものだから、無理言って来てしまったかなと思って・・・」 「そんな事は気にしなくて良いよ、これからは好きな時に、遊びに来てくれたら良いからね」 「うん、有難う」 「仁、桃も大切にしてあげて」 「かしこまりました」 この言葉に桃は完全に逝ってしまった様だ、心の中に大切にしてあげてが、何時までも響き残っている。 「桃、余り公平のペースは乱さないで上げてね」 梓がお願いするけど、桃は反論する。 「何時でも来て良いよって言ってくれたし、大切にしてあげてとも言ってくれたのだから、私は言われた通りに好きな時お邪魔するわ」 「桃!」 「梓、良いんだよ、桃は友達以上なんだから」 「分かったわ」 こう言われてしまうと、いくら梓でも何も言え無くなる。 梓の心には、杏から受けた忠告も蘇ってきていた、結衣と聡美はもう見ているしか無い状態である。 夕食の時間、結衣と聡美はさり気なく公平に質問をした。 「公平は、女性に対して興味は無いのか?」 「何で?」 「公平君は、誰とでも意識しないで接してるから、興味が無いのかなと思ってね」 「興味あるかな? 無いかな?」 曖昧な返事である、しかし結衣と聡美ではこれ以上は、怖くて聞けないのが現実である。 築いて来た信頼関係を壊すのが・・・遺言書の内容が2人の頭を過るのである。 翌日の昼休み、今日も桃は公平の横に陣を取る、嬉しそうに差し出すお弁当、5人色違いのお弁当箱で昼食が始まった。 「桃、美味しいよ」 「本当に? 嬉しいな」 桃は最高の笑顔を、公平に見せる。 「桃は、凄く料理が上手いんだね」 「有難う」 それを聞いている梓は、面白くないのは当たり前である。 少し前までは向こう側の人間だったのに、凄いと知れば掌を返したように近寄って来る。 ずっと一緒に耐えてきた梓は、どうしても許せない部分が有るのだった。 「桃、お礼に夕食を招待したいから、週末空いてる時があれば泊まりにおいでよ」 「うん! 公平君の家は夕食とか凄い豪華そうだよね」 「そんな事は無いけど、良いもの作らせるから」 「有難う、今度の土曜日で良いかな?」 「良いよ」 「楽しくなりそうだね」 聡美が言う。 「梓も来るだろう?」 結衣が気を使うと、公平は梓を見つめながら言った。 「梓は来るよ」 梓は素直に頷いていた、こうして週末のお泊り会が決まったのである。 「桃!がんばるんだ」 桃は自分で自分に気合を入れていた、服を選び少しだけ不慣れな化粧をして、髪型も何時もとは変えて家を出たのであった。 途中慌ててパジャマを取りに戻る所は、少し抜けてるのかもしれない。 「仁、少し寝るから」 「かしこまりました」 「結衣、聡美、桃が来たら宜しくね」 「分かった」 「分かったよ、公平君」 公平は自室へ戻り、恒例の昼寝タイムに入った。 「こんにちは、酒井桃です」 「桃様、いらっしゃいませ」 桃は仁にリビングへ通された、ソファーの方では結衣、聡美がくつろいでいる。 「こんにちは」 桃がソファに腰掛けながら言う。 「いらっしゃい」 「桃君、今日は特別可愛いね」 結衣と聡美が応対する。 「公平君と梓はお昼寝?」 「いいや、梓はまだ来てないな」 結衣が答えると、桃は 「公平君の所へ挨拶に行きたいんだけど、部屋は何処?」 「階段登ってすぐだけど、止めといた方が良いと思うよ」 聡美が一応警告する。 「大丈夫、迷惑かけ無い様にするから」 笑顔で言うと桃は、公平の部屋へ向いリビングを出て行った。 「大丈夫なのかね?」 結衣が心配すると、聡美は首を傾げて答えを表現した。 コンコン! 「公平君、桃です」 「公平君?」 返事がない寝ているのかも知れない、悪い気持ちはあったが、そっと扉を開け中の様子を伺う桃。 ベッドで公平が寝ている、桃は静かに近づき公平の寝顔を見つめていた。 暫くして、そっと公平の髪をかきあげる、やっぱり思った通りのイケメンだ、寝顔はどちらかと言うと可愛い・・・その時だった! 公平の手が桃の腕を引っ張り引き寄せた。 一瞬の事で何が何だか分からない桃。 「うーん 聡美、寒いから中に入りなよ」 と言いながら桃はベッドの中へ入れられる、公平の足が覆い被さってくる、背中から引き寄せられ桃の顔は、公平の鼓動が聞こえる所にあった。 桃はそっと上目つかいで公平を見つめる、寝ているようだ下からのアングルにドキッとする桃、体を完全に支配されてるので身動きは取れない。 「聡美、フリフリがチクチクする」 そう言うと公平は背中を向けた、そのすきに桃はベッドから出て、乱れた服装を直し公平の部屋を出た。 聡美と間違われたとは言え、桃の心臓はまだ激しく顔は熱くなってる。 「桃、お帰り」 結衣が声を掛ける。 「公平君、寝てたでしょ?」 「うん」 「心配だったんだ、寝てる時に公平君に近づくと、抱き枕にされちゃうからさ」 聡美が言うと結衣が付け足す。 「それも無意識で、結構過激に抱きついて来るからな」 「そうなんだ・・・」 桃は公平の部屋での事を隠した、どうやら今回も、無意識での行動なのだろうと理解したのである。 逆に無意識なら、もう1回行ってみても良いかなと思ったのだが、チクチクすると言う言葉が良く分からなかったので、止めとく事に決めた、嫌われたく無いからである。 暫くすると公平が降りて来た。 「公平、お早う」 「公平君、お早う」 『お早う』 「仁、おやつにしようか」 「かしこまりました」 全員テーブル席へ移動する、梓が居ないので、ちゃっかり公平の横へ座る桃。 「今日はロールケーキなんだね」 「はい、イチゴクリームと、バニラクリームの2種類用意しました」 「きっと、梓も喜ぶね」 「桃」 「何?」 先程の事を聞かれるのではと、少し焦っている。 「何時もと雰囲気が違く、今日も可愛いね」 「え、有難う」 桃は満面の笑みを浮かべた。 「皆、こんにちは~」 梓がやって来た。 「梓、今日はロールケーキだよ」 「やった!」 梓に取って、公平の家でのおやつナンバーワン1が、ロールケーキである。 「今日はイチゴとバニラね、美味しそうだわ」 素で喜んでる梓が可愛い。 「梓も泊まって行く?」 「う~ん、そうね、杏の部屋を借りるわ」 「分かった」 「杏さんって?」 桃が不思議そうに聞く。 「杏は私の姉よ」 「梓のお姉さんに、部屋があるの?」 「うん、杏も恋人以上だからね」 桃には、まだ恋人以上とか友達以上という意味が、よく理解出来ていなかった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加