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#14 お坊ちゃまはお泊り会をする
公平達は、桃を連れて屋敷に帰って来た。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、皆様」
「初めまして、酒井桃と言います」
桃は丁寧なお辞儀をする。
「初めまして、公平様のお友達でございますね、私の事は仁とお呼び下さい」
「はい、以前教室でお会いしてます」
「クラスメイト様でしたか、どうぞお上がり下さい、直ぐにお茶のご用意を致します」
仁は嬉しそうに桃を促した。
「有難う御座います」
桃はリビングに通され、ドーナッツとコーヒーを出されていた、そこへ結衣と聡美が降りてくる。
「桃、随分大胆だな」
そう言いながら結衣と聡美も席に座る。
「何がかな?」
桃は遠慮なく答えを出す。
「こんにちは~」
「梓様、いらっしゃいませ」
「公平は?」
「まだ自室だと思われます」
「有難う」
梓は2階へ上がって行った。
結衣と聡美も、ドーナッツとコーヒーでおやつタイムである。
「公平君は降りて来ないの?」
桃が不思議そうに聞く、当たり前だろう普通は友達が遊びに来てたら、直ぐに顔を出すものである。
「公平君はきっと、昼寝してると思うよ」
「え?」
桃が驚く。
「仕方が無いのさ、マイペースで生きているのが公平なんだからね」
結衣や聡美は、すでに公平を理解し始めていた。
「梓は?」
桃が不安そうに聞く。
「公平と一緒に、昼寝してるんじゃないかな?」
「一緒にって、一緒のベッドで?」
「そうだよ」
聡美が普通に答える、桃が仁を見ると微笑みながら頷いた。
「結衣、聡美、確認したいんだけど、公平君と梓は付き合ってる訳では無いのよね?」
「ああ、あの2人は家族見たいなものなんだろうな」
結衣はあえて、自分達も公平の抱き枕に成ってる事が有る事は隠した。
「桃、ごめんね」
公平が梓と一緒に降りてきた時には、2時間経っていた。
「桃こそ、ごめんなさい」
「何で謝るの?」
「お昼寝するなんて知らなかったものだから、無理言って来てしまったかなと思って・・・」
「そんな事は気にしなくて良いよ、これからは好きな時に、遊びに来てくれたら良いからね」
「うん、有難う」
「仁、桃も大切にしてあげて」
「かしこまりました」
この言葉に桃は完全に逝ってしまった様だ、心の中に大切にしてあげてが、何時までも響き残っている。
「桃、余り公平のペースは乱さないで上げてね」
梓がお願いするけど、桃は反論する。
「何時でも来て良いよって言ってくれたし、大切にしてあげてとも言ってくれたのだから、私は言われた通りに好きな時お邪魔するわ」
「桃!」
「梓、良いんだよ、桃は友達以上なんだから」
「分かったわ」
こう言われてしまうと、いくら梓でも何も言え無くなる。
梓の心には、杏から受けた忠告も蘇ってきていた、結衣と聡美はもう見ているしか無い状態である。
夕食の時間、結衣と聡美はさり気なく公平に質問をした。
「公平は、女性に対して興味は無いのか?」
「何で?」
「公平君は、誰とでも意識しないで接してるから、興味が無いのかなと思ってね」
「興味あるかな? 無いかな?」
曖昧な返事である、しかし結衣と聡美ではこれ以上は、怖くて聞けないのが現実である。
築いて来た信頼関係を壊すのが・・・遺言書の内容が2人の頭を過るのである。
翌日の昼休み、今日も桃は公平の横に陣を取る、嬉しそうに差し出すお弁当、5人色違いのお弁当箱で昼食が始まった。
「桃、美味しいよ」
「本当に? 嬉しいな」
桃は最高の笑顔を、公平に見せる。
「桃は、凄く料理が上手いんだね」
「有難う」
それを聞いている梓は、面白くないのは当たり前である。
少し前までは向こう側の人間だったのに、凄いと知れば掌を返したように近寄って来る。
ずっと一緒に耐えてきた梓は、どうしても許せない部分が有るのだった。
「桃、お礼に夕食を招待したいから、週末空いてる時があれば泊まりにおいでよ」
「うん! 公平君の家は夕食とか凄い豪華そうだよね」
「そんな事は無いけど、良いもの作らせるから」
「有難う、今度の土曜日で良いかな?」
「良いよ」
「楽しくなりそうだね」
聡美が言う。
「梓も来るだろう?」
結衣が気を使うと、公平は梓を見つめながら言った。
「梓は来るよ」
梓は素直に頷いていた、こうして週末のお泊り会が決まったのである。
「桃!がんばるんだ」
桃は自分で自分に気合を入れていた、服を選び少しだけ不慣れな化粧をして、髪型も何時もとは変えて家を出たのであった。
途中慌ててパジャマを取りに戻る所は、少し抜けてるのかもしれない。
「仁、少し寝るから」
「かしこまりました」
「結衣、聡美、桃が来たら宜しくね」
「分かった」
「分かったよ、公平君」
公平は自室へ戻り、恒例の昼寝タイムに入った。
「こんにちは、酒井桃です」
「桃様、いらっしゃいませ」
桃は仁にリビングへ通された、ソファーの方では結衣、聡美がくつろいでいる。
「こんにちは」
桃がソファに腰掛けながら言う。
「いらっしゃい」
「桃君、今日は特別可愛いね」
結衣と聡美が応対する。
「公平君と梓はお昼寝?」
「いいや、梓はまだ来てないな」
結衣が答えると、桃は
「公平君の所へ挨拶に行きたいんだけど、部屋は何処?」
「階段登ってすぐだけど、止めといた方が良いと思うよ」
聡美が一応警告する。
「大丈夫、迷惑かけ無い様にするから」
笑顔で言うと桃は、公平の部屋へ向いリビングを出て行った。
「大丈夫なのかね?」
結衣が心配すると、聡美は首を傾げて答えを表現した。
コンコン!
「公平君、桃です」
「公平君?」
返事がない寝ているのかも知れない、悪い気持ちはあったが、そっと扉を開け中の様子を伺う桃。
ベッドで公平が寝ている、桃は静かに近づき公平の寝顔を見つめていた。
暫くして、そっと公平の髪をかきあげる、やっぱり思った通りのイケメンだ、寝顔はどちらかと言うと可愛い・・・その時だった! 公平の手が桃の腕を引っ張り引き寄せた。
一瞬の事で何が何だか分からない桃。
「うーん 聡美、寒いから中に入りなよ」
と言いながら桃はベッドの中へ入れられる、公平の足が覆い被さってくる、背中から引き寄せられ桃の顔は、公平の鼓動が聞こえる所にあった。
桃はそっと上目つかいで公平を見つめる、寝ているようだ下からのアングルにドキッとする桃、体を完全に支配されてるので身動きは取れない。
「聡美、フリフリがチクチクする」
そう言うと公平は背中を向けた、そのすきに桃はベッドから出て、乱れた服装を直し公平の部屋を出た。
聡美と間違われたとは言え、桃の心臓はまだ激しく顔は熱くなってる。
「桃、お帰り」
結衣が声を掛ける。
「公平君、寝てたでしょ?」
「うん」
「心配だったんだ、寝てる時に公平君に近づくと、抱き枕にされちゃうからさ」
聡美が言うと結衣が付け足す。
「それも無意識で、結構過激に抱きついて来るからな」
「そうなんだ・・・」
桃は公平の部屋での事を隠した、どうやら今回も、無意識での行動なのだろうと理解したのである。
逆に無意識なら、もう1回行ってみても良いかなと思ったのだが、チクチクすると言う言葉が良く分からなかったので、止めとく事に決めた、嫌われたく無いからである。
暫くすると公平が降りて来た。
「公平、お早う」
「公平君、お早う」
『お早う』
「仁、おやつにしようか」
「かしこまりました」
全員テーブル席へ移動する、梓が居ないので、ちゃっかり公平の横へ座る桃。
「今日はロールケーキなんだね」
「はい、イチゴクリームと、バニラクリームの2種類用意しました」
「きっと、梓も喜ぶね」
「桃」
「何?」
先程の事を聞かれるのではと、少し焦っている。
「何時もと雰囲気が違く、今日も可愛いね」
「え、有難う」
桃は満面の笑みを浮かべた。
「皆、こんにちは~」
梓がやって来た。
「梓、今日はロールケーキだよ」
「やった!」
梓に取って、公平の家でのおやつナンバーワン1が、ロールケーキである。
「今日はイチゴとバニラね、美味しそうだわ」
素で喜んでる梓が可愛い。
「梓も泊まって行く?」
「う~ん、そうね、杏の部屋を借りるわ」
「分かった」
「杏さんって?」
桃が不思議そうに聞く。
「杏は私の姉よ」
「梓のお姉さんに、部屋があるの?」
「うん、杏も恋人以上だからね」
桃には、まだ恋人以上とか友達以上という意味が、よく理解出来ていなかった。
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