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#7 お坊ちゃまは努力した
朝の通学、結衣と聡美・梓は並んで歩いていた。
「あ~あ 今日で学校休むの3日目か、結衣と聡美は会ってないの?」
「梓君が遊びに来ても会わないんだから、僕達も当然会ってないよ」
梓が心配そうに聞くと、聡美がお手上げと言う感じで答える。
「仁さんは、何か言ってないの?」
「それも同じだよ、梓が聞いて何も言わないんだからさ」
「そっかぁ、クラスでは騒動に成ってるのにね」
「本当に関係する親全員の解雇通達だもんな、それも退職金とか出ない様な理由付けてだから、エグいよなぁ」
「どうなっちゃうんだろうね」
3人も直接被害は無い物の、やはりクラスメイトの事であり心配では有るようだ。
公平には思い留まって欲しいと思いつつも、会えないのではどうする事も出来ない。
公平と同じクラスの酒井家では、最近毎日の様に暗い顔をして帰宅してた主が、今日は上機嫌で帰って来た。
「ただいま~」
「パパお帰りなさい」
「桃、喜んでくれ解雇が取り消しになったぞ」
「本当? これからもこの家にいれるのね」
「ああ、そして桃を進学させてやることも出来るよ」
「有難う、パパ」
「何でも力を持ってる方が、解雇に猛反対をしてくれたそうでな」
「そうなんだ」
きっと公平君なのねと桃は考えていた。
「お早う、公平君」
「やっと学校行く気になったか」
「うん、お早う結衣、聡美」
「公平~ 今日は学校行くよ」
「お早う、梓」
「お早う」
「行ってくるね」
「いってらっしゃいませ」
何時もの日常に戻り、4人は屋敷の敷地を出て行った。
「あのう、伊藤公平君」
目の前には、可愛らしい少女が立っていた。
「ん? 誰」
「私、同じクラスの酒井桃です」
「酒井さん、何か用?」
「あ、桃で良いです」
「そう、桃何の用?」
「実は、お父さんの突然決まった解雇が取り消しに成ったんだけど、公平君のお陰かなと思ってね」
「うん、俺を可愛がってくれる、叔父を説得するのに時間が掛かってしまって、申し訳なかったね」
「いいえとんでもないです、むしろ感謝してます。それで・・・ちょっと図々しいかも知れないんですが、私とお友達に成ってくれませんか?」
「良いよ、桃」
「本当ですか、有難う御座います、それじゃ学校で」
「うん」
「良かったな公平、友達増えたぞ」
「別に良くは無いけどね」
「公平君は静かな方が好きなんだよね」
「うん、聡美の言う通り」
「桃は、手のひら返したように図々しわね」
「なんだよ、梓きげん悪いな」
「そんな事は無いよ、結衣」
結衣と聡美が純粋に喜んでいる中、昔から公平を見て来てる梓は心から喜ぶ事が出来ないのであった。
学校の玄関に到着すると、下駄箱の扉をそれぞれが開ける。
「梓、ラブレター無くなったね」
「これで良いのよ」
「そうなんだ」
「結衣と聡美はラブレターとかどうしてるの?」
「わたしは、即ゴミ箱」
「僕はちゃんと読んでお断りしてるよ」
「どっちが正解なんだろうね、興味もないし経験も無いから分からないや」
「公平は私と同じだろう、屋上来なかったんだから」
「そうだったね」
中々良い雰囲気で教室へ向かう階段を上っていく。
ホームルームの時間には副担任が入って来て、席へ戻るように促す。
「えー 担任が先日の事件で謹慎処分と成ってますので、副担任の私が暫くは、担任代理とさせて頂きますので、宜しくお願いします」
「担任は首に成るんですか?」
「それは分かりません」
担任は解雇で良いよな、という小声が聞こえてくる。
「梓」
「何? 公平」
「梓は悪く無いからね」
「うん、有難う」
梓は公平の優しさに微笑んで返した。
「さぁ、公平お昼に行こう」
「今日からは教室で良いよ、結衣と聡美も一緒に食べるみたいだし」
「公平が良いなら、賛成よ」
4人は机を並べてお弁当を食べ始めた。
「結衣と聡美のお弁当は美味しい?」
「ああ、美味しいし健康バランスも良い感じだよ」
「そうだね、本当に有り難いよ、僕達で作るとは言ったんだけどね」
「結衣と聡美は作って貰ってれば良い」
「え~ 桃それは本当なの?」
「そうよ、公平君が解雇を取り消してくれたのよ」
「信じられないなぁ、そんな力持ってる様には思えないし」
などと周りからは聞こえて来る、しかし公平と梓は気にして無いかの様に、お弁当を食べている。
「公平君、本当の事を言わなくて良いのかい」
「良いんだよ、聡美」
「そうそう、言ったら言ったで、また面倒に成るしね」
「梓もかよ」
「結衣と聡美も、余計な事は言わないでね」
「分かったよ、梓君」
結衣と聡美は心底では納得出来て無い物の、当事者達がそう言うのだから従うしか無かった。
放課後・・・
「帰ろう、梓」
「うん」
「私達も一緒に帰るよ」
「良いよ」
「最近、私達も公平の気持ちが少し分かってきたんだ」
「そうなんだよね、僕達が孤児院から、公平君の家に移り住んだ事が知られてから、陰口がね」
「聞こえて来てるから知ってる」
「色気を使ったとか、メイドに成ってるとかさ」
「結衣も聡美も、気にする事じゃ無いんじゃない?」
「俺もそう思う、人間の価値なんてそれで決まらない」
「そうだね、公平君は優しいよね」
「公平今日は何するの?」
「沢山寝る」
「分かったわ、それじゃまた明日ね」
梓は3人に笑顔で手を降ると家に入って行った。
「梓も本当に、面倒見が良いよな」
「うん、助かってる」
「仁、ただいま」
「お帰りなさいませ」
「今日は結衣と聡美だけでおやつを頼む、俺はすぐ昼寝したい」
「かしこまりました、結衣様、聡美様、お着替えが済みましたら、お越し下さいませ」
「はーい」
「有難う御座います」
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