#7 お坊ちゃまは努力した

1/1
前へ
/35ページ
次へ

#7 お坊ちゃまは努力した

朝の通学、結衣と聡美・梓は並んで歩いていた。 「あ~あ 今日で学校休むの3日目か、結衣と聡美は会ってないの?」 「梓君が遊びに来ても会わないんだから、僕達も当然会ってないよ」 梓が心配そうに聞くと、聡美がお手上げと言う感じで答える。 「仁さんは、何か言ってないの?」 「それも同じだよ、梓が聞いて何も言わないんだからさ」 「そっかぁ、クラスでは騒動に成ってるのにね」 「本当に関係する親全員の解雇通達だもんな、それも退職金とか出ない様な理由付けてだから、エグいよなぁ」 「どうなっちゃうんだろうね」 3人も直接被害は無い物の、やはりクラスメイトの事であり心配では有るようだ。 公平には思い留まって欲しいと思いつつも、会えないのではどうする事も出来ない。 公平と同じクラスの酒井家では、最近毎日の様に暗い顔をして帰宅してた主が、今日は上機嫌で帰って来た。 「ただいま~」 「パパお帰りなさい」 「桃、喜んでくれ解雇が取り消しになったぞ」 「本当? これからもこの家にいれるのね」 「ああ、そして桃を進学させてやることも出来るよ」 「有難う、パパ」 「何でも力を持ってる方が、解雇に猛反対をしてくれたそうでな」 「そうなんだ」 きっと公平君なのねと桃は考えていた。 「お早う、公平君」 「やっと学校行く気になったか」 「うん、お早う結衣、聡美」 「公平~ 今日は学校行くよ」 「お早う、梓」 「お早う」 「行ってくるね」 「いってらっしゃいませ」 何時もの日常に戻り、4人は屋敷の敷地を出て行った。 「あのう、伊藤公平君」 目の前には、可愛らしい少女が立っていた。 「ん? 誰」 「私、同じクラスの酒井桃です」 「酒井さん、何か用?」 「あ、桃で良いです」 「そう、桃何の用?」 「実は、お父さんの突然決まった解雇が取り消しに成ったんだけど、公平君のお陰かなと思ってね」 「うん、俺を可愛がってくれる、叔父を説得するのに時間が掛かってしまって、申し訳なかったね」 「いいえとんでもないです、むしろ感謝してます。それで・・・ちょっと図々しいかも知れないんですが、私とお友達に成ってくれませんか?」 「良いよ、桃」 「本当ですか、有難う御座います、それじゃ学校で」 「うん」 「良かったな公平、友達増えたぞ」 「別に良くは無いけどね」 「公平君は静かな方が好きなんだよね」 「うん、聡美の言う通り」 「桃は、手のひら返したように図々しわね」 「なんだよ、梓きげん悪いな」 「そんな事は無いよ、結衣」 結衣と聡美が純粋に喜んでいる中、昔から公平を見て来てる梓は心から喜ぶ事が出来ないのであった。 学校の玄関に到着すると、下駄箱の扉をそれぞれが開ける。 「梓、ラブレター無くなったね」 「これで良いのよ」 「そうなんだ」 「結衣と聡美はラブレターとかどうしてるの?」 「わたしは、即ゴミ箱」 「僕はちゃんと読んでお断りしてるよ」 「どっちが正解なんだろうね、興味もないし経験も無いから分からないや」 「公平は私と同じだろう、屋上来なかったんだから」 「そうだったね」 中々良い雰囲気で教室へ向かう階段を上っていく。 ホームルームの時間には副担任が入って来て、席へ戻るように促す。 「えー 担任が先日の事件で謹慎処分と成ってますので、副担任の私が暫くは、担任代理とさせて頂きますので、宜しくお願いします」 「担任は首に成るんですか?」 「それは分かりません」 担任は解雇で良いよな、という小声が聞こえてくる。 「梓」 「何? 公平」 「梓は悪く無いからね」 「うん、有難う」 梓は公平の優しさに微笑んで返した。 「さぁ、公平お昼に行こう」 「今日からは教室で良いよ、結衣と聡美も一緒に食べるみたいだし」 「公平が良いなら、賛成よ」 4人は机を並べてお弁当を食べ始めた。 「結衣と聡美のお弁当は美味しい?」 「ああ、美味しいし健康バランスも良い感じだよ」 「そうだね、本当に有り難いよ、僕達で作るとは言ったんだけどね」 「結衣と聡美は作って貰ってれば良い」 「え~ 桃それは本当なの?」 「そうよ、公平君が解雇を取り消してくれたのよ」 「信じられないなぁ、そんな力持ってる様には思えないし」 などと周りからは聞こえて来る、しかし公平と梓は気にして無いかの様に、お弁当を食べている。 「公平君、本当の事を言わなくて良いのかい」 「良いんだよ、聡美」 「そうそう、言ったら言ったで、また面倒に成るしね」 「梓もかよ」 「結衣と聡美も、余計な事は言わないでね」 「分かったよ、梓君」 結衣と聡美は心底では納得出来て無い物の、当事者達がそう言うのだから従うしか無かった。 放課後・・・ 「帰ろう、梓」 「うん」 「私達も一緒に帰るよ」 「良いよ」 「最近、私達も公平の気持ちが少し分かってきたんだ」 「そうなんだよね、僕達が孤児院から、公平君の家に移り住んだ事が知られてから、陰口がね」 「聞こえて来てるから知ってる」 「色気を使ったとか、メイドに成ってるとかさ」 「結衣も聡美も、気にする事じゃ無いんじゃない?」 「俺もそう思う、人間の価値なんてそれで決まらない」 「そうだね、公平君は優しいよね」 「公平今日は何するの?」 「沢山寝る」 「分かったわ、それじゃまた明日ね」 梓は3人に笑顔で手を降ると家に入って行った。 「梓も本当に、面倒見が良いよな」 「うん、助かってる」 「仁、ただいま」 「お帰りなさいませ」 「今日は結衣と聡美だけでおやつを頼む、俺はすぐ昼寝したい」 「かしこまりました、結衣様、聡美様、お着替えが済みましたら、お越し下さいませ」 「はーい」 「有難う御座います」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加