#9 お坊ちゃまは風呂で・・・

1/1
前へ
/35ページ
次へ

#9 お坊ちゃまは風呂で・・・

テスト期間の最終日、お決まりの4人で登校をしている。 「今日でテストも最後ね」 「そうだね、所で梓」 「梓も胸小さいとか言われると、怒るの?」 公平は特に感情も込めずに聞いた。 「そんな事は無いわよ、もっと小さい人だっているでしょう」 「そうだね」 梓が聡美を見ると、公平も釣られて聡美の胸を見る。 「何で、公平君も梓君も僕を見るんだい、今大きく成りつつ有る所なんだよ」 「聡美」 「な、何かな公平君」 「ゲームで教えてもらってる時、当たるけど変わってない」 「もう~ 傷つくなぁ・・・」 胸を片手で押さえながらクレームを入れる聡美だった。 梓は自分の部屋で着替えると、直ぐに公平の屋敷へ向かう。 「仁さん、こんにちは~」 「梓様、いらっしゃいませ」 「やぁ、梓」 「梓君、こんにちは」 丁度着替えを終えて降りて来た、結衣と聡美に出迎えられると、目的の人物を探した梓だった。 「結衣、聡美こんにちは、公平は?」 「寝てると思うよ」 「本当に公平君は昼寝が好きなんだね」 「そうね、もう習慣ね」 梓はもう慣れてる様で、諦めて広間へ向かうのであった。 「梓様、お茶とお菓子で御座います」 「有難う御座います」 「公平は、昔から昼寝ばかりしてたのか?」 「ううん、ある事が起きるまでは、普通に外で遊ぶ方が多かったわ」 おやつを食べながら、梓は昔の話しを始めたのだった。 7年前、公平と梓は6歳、杏9歳 「3人共、遠くへ行っては駄目よ、ママの見える所に居てね」 「うん」 「はーい、梓ママ」 「わかったー」 「公平は走るの遅いなぁ」 「違うよ、杏が速いんだよ」 「杏、公平滑り台にいこー」 「良いよ」 公平と梓はすべり台へ向かい走って行った。 「私はママの所でジュース飲んで来る」 杏は母親の元へ走って行った。 「公平見て、可愛い猫ちゃんだよ」 「本当だ可愛いね」 梓が近寄った事で猫は慌てて逃げて行ってしまった。 「ああ、草むらに逃げちゃった」 「梓、追いかけたら駄目だよ、怒られるよ」 梓は、背丈位ある草むらへ入って行く。 「少しだけよ」 「おーい、梓、公平何処行くんだー・・・聞こえてないな」 心配する杏の視界から2人が消えてしまった。 「ん?」 梓の前に現れた、2人の中年男性。 「おじさん達誰?」 公平が不思議そうに聞くと、不審な男性達は不敵な笑みを浮かべたのだった。 「おじさん達はね、このお嬢ちゃんを貰って行くのさ」 「いやー、公平助けて」 「やめてあげて、梓が苦しそう」 「公平・・・」 「えい! おじさん達どっか行け!」 泣き出す梓に対して公平は、救い出す為に木の棒を拾い振り回す。 「痛えなぁ・・・ガキが優しく話してやってたら調子に乗りやがって」 「公平、有難う」 「梓、俺が守ってあげる」 梓を自分の胸の中に抱え込み、相手に背を向ける。 「コラ、ガキがそこ退け」 「嫌だ」 「公平、頭から血が・・・」 「ちっ、こんな木の棒じゃ埒が明かねえや」 「いくら何でもナイフはやばくないか?」 「構わねえよ、死ねやガキが」 後ろからナイフに刺された公平は、口から血を吐き出すが梓だけは離さないでいる。 「ゴホッ、ゲホッ、梓守るから」 「公平、公平」 公平の血を浴びながらも、しっかりと守られる梓は可愛い顔の見る影も無く、クシャクシャに成り泣き叫んでいる。 「あそこです」 「コラー お前達子供に何してるんだ、みんなで取り押さえるんだ」 事態を遠くで見た杏が、大人を呼んで駆けつけたのだった。 「公平大丈夫か? ナイフが刺さってるじゃ無いか!!」 「公平くん、今救急車が来るからね」 「公平、公平、死んじゃいやだーーーーー」 杏・梓の母親が救急車を呼んだが、既に公平の意識は無い状態だった。 5分程で救急隊員が公平の元へやってきた。 「通して頂きますね、これは酷いナイフはこのままで搬送しよう」 「待って私も行く、公平と行く」 「梓、梓、落ち着け、きっと公平は助かる」 「本当? 杏本当なの? 公平は助かるの?」 「きっと大丈夫だ、もう泣くな」 「うん」 杏も泣きたいのを堪え、血で真っ赤に染まった梓を優しく抱き抱えたのだった。 梓は涙を浮かべながら、乾いた喉をコーヒーで潤した。 「そんな事があったのか」  「梓君が公平君から目が離せない気持ちは解るな、命の恩人なんだもんね」 「うん、それから公平のお父さんは、護身術、空手、柔道を毎日習わせたわ、練習が終わると疲れて眠ってしまうほどね」 「もしかして、そこから習慣に成ったのか?」 「そうよ」 「なるほどね」 「公平起きてこないし、帰るね」 「ああ」 「またね梓君」 「仁さん、ご馳走様でした」 梓は悲しさを思い出し、今日は家に帰る事に決めたのだった。 「梓君と公平君は、深い絆で結ばれてるんだね」 「そうだな」 結衣と聡美も悲しい気持ちと、公平の強さに改めて感心するのであった。 公平は、冬の短い日が傾きかけた頃目を覚ました。 「あー 夕方まで寝ちゃったのか・・・」 「夕食までは時間があるか、風呂入ろう」 公平は眠気を覚ます為に、着替えを持ち下へ降りて行った。 札の確認をして、服を脱ぎ大きな風呂場へと入って行く。 「あ、結衣、聡美」 「ななな、なんで公平君が、結衣入浴の札は?」 「忘れた・・・」 「こ、公平恥ずかしくないのか?」 「結衣の裸は前に見てるし・・・」 「嫌、自分を隠さないで良いのか?」 「気にしてない」 「そうなんだね、ハハハ」 結衣と聡美は自分の体を隠しつつ、目のやり場に困る。 「先に頭洗うから」 そう言うと公平は勝手に頭を洗い始める。 「ねぇ結衣、僕初めて男の人の体見ちゃったよ」 「それは私もだけど、鍛えられてる体だったな、後は恥ずかしくて言えないが・・・」 「そうだね、ハハハ」 「しょうが無い、頭洗ってやるか」 「うん」 結衣と聡美はタオルで体を包み、公平の頭を洗い始めた。 「何してるの?」 「公平じっとしてろ、頭洗ってやるから」 「私は、背中をあらってあげるよ」 「有難う、人に頭洗って貰うと気持ち良い」 「あー、分かる分かる」 「あ、この傷って子供の頃の?」 「梓に聞いたの?」 「うん」 「どれどれ」 結衣が腰の傷に目を移すと、手元が公平の顔を覆う。 「結衣、手が目に・・・シャンプーで痛い」 「悪い、今洗ってやるからな」 「痛い、痛い、タオル・・・」 「公平君、それは違うよ、僕が体を巻いてるタオルだから」 「何でも良い」 「ああ、駄目」 「おい、聡美押してくるなよ」 「だって離れると見えちゃうから」 「タオル返して」 「聡美、それは私のだ」 「ええ」 「シャワーのホースが苦しい」 公平は体に絡まったホースを解こうと、激しく体を動かす。 「聡美どけ」 結衣が叫ぶ。 「無理だよ、ホースが絡まって石鹸ですべるし、見えちゃうし」 「うううう・・・」 公平は、目の前に置いておいたスマホを手に取る 「公平! 何で風呂にスマホ持ってきてるんだよ」 「テレビ見るためと、梓呼ぶため」 「聡美止めろー」 「うーん、届かない」 「ふぅ、呼んだから助けてくれる」 公平は安心するが、結衣と聡美は慌てて更に酷い状況へと成って行く。 「まずい、早く離れないと煩いのが飛んで来るぞ」 「うん、分かってる」 「公平も動けよ」 結衣が公平を足蹴にした所で、煩い娘がやって来た。 「公平いるの?」 「来た!」 「あず・・・」 「公平君御免、静かにしてね」 公平の口を両手で塞ぐ聡美。 「・・・」 公平いないの? 「・・・」 公平開けて大丈夫? 「やばい、やばい」 「どうしよう」 時既に遅く、梓が恐ろしい顔で立っていた。 「結衣! 公平に裸で跨って、何がどうしようなのかな?」 「ハハハ、これには事情があってね」 「へぇー、聡美が後ろから裸で、公平の口を押さえてるのも?」 「あ、ああ実はそうなんだよね」 「梓、助けて」 「公平は、こう言ってるけど?」 「違う違う、別の意味での助けてなんだよ」 「そうなんだ、僕達動けなくてさ」 「まぁ、言い訳はゆ~っくり聞かせて貰うわ、はい3人共タオル」 梓は3人を助け、タオルを渡したのだった。 広間でコーヒーを飲む4人、結衣と聡美が必死に事情を説明する。 「なるほどねぇ、でも入浴の札は気を付けるって言ってたよね」 「ああ、ごめん」 「僕もうっかりしててさ」 「公平も、2人が入ってたら出直しなさいよね」 「俺は構わない、もう全部見られたし」 公平は何事も無かったかの様に、コーヒーを楽しんでいる。 「ぜ、全部って・・・」 「結衣、聡美見たの?」 「見てない見てない、目つぶったし」 「僕も手で隠したから見てないよ」 「そう、それなら良いわ、お互いもっと気を付けた方が良いと思うわよ」 「ああ、気を付けるよ」 「ごめんね、梓君」 「済んだ事だし良いんじゃない? 公平も普通だしね」 「全く貴方達は・・・今日は帰るわね」 「梓お休み」 「お休み~」 「おやすみ、梓君」 梓が帰りホッとする結衣と聡美だった。 「ふぅ、公平が平常心で助かったな」 「うんそうだね、でも見ちゃったのは一生秘密が良さそうだね」 「ああ、そうだな」 今後この約束は一生守られるのであった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加