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「悪いがそろそろ漫才も終わりじゃ………悪く思うな冒険者共、この婆を大笑いさせた事だけは褒めてやろう」
西の魔女はニッコリしてそう言うと、杖を掲げて呪文を詠唱し始める。
「まずい!来るぞ!どうするカイル!?」
「接近戦は厳しいだろうな。奴の射程に入った瞬間に、魔法をぶっ放される……。っくそう!打つ手なしか?」
そして逃げたとしても同じだ、こんな見晴らしの良い場所なのだから、狙い撃ちされて終わりだ。
「………わかった。俺が食い止める!カイル!エレナ!シオン!おまえ達は先に逃げろ!俺の重装備なら逃げる時間くらいは稼げる!」
明らかな死亡フラグ発言。
「でもそれじゃあドレッド兄が!」
「俺の事は構うな……。それより……村に帰ったら、魔女討伐のお祝いの準備でもしといてくれ。今晩は極上のエールで乾杯だ」
「無駄にカッコつけてるけど、結局はただの死亡フラグ発言ね」
エレナは前髪を指先でくるくる弄りながらそう言った。
「あーあとカイル!、すまん!、そのロングソード!俺に貸してくれ!」
ドレッド兄さんに貸すと、また紛失されそうだな……今の勝利宣言……まさか本気で戦うつもりだったのか?。
「……っく!。駄目だドレッド兄さん!、俺は……!、俺は!」
嘗て出会った、あの勇者のように、俺も強くなっていれば………。
カイルは自分を救った勇者の事を思い浮かべる。冒険者になろうと思ったのも、やはり彼の影響が大きいだろう。
「カイル、力、欲しい?」
シオンは俺の耳元にそっと囁いた。
───そりゃ……欲しいさ…!
─────大切な仲間を守れる力が!
「ん!……カイル!、手の甲!」
シオンが俺の手を指差し、驚いた様子でそう言った。
突然カイルの手の甲に、刻印のようなものが浮かび上がり、光り始める。
「おおカイル!、クラス習得の前兆だ!、おまえも遂にエレナやシオンと同じく無職卒業かー!、こんな時でなければ、最寄りの酒場で極上のステーキとキリッキリに冷えたエールで乾杯したいところだ!」
冒険者の中で。クラスを習得していない者の事を無職と言う。
エレナは既にビーストテイマーのクラスを習得、シオンは勇者のクラスを習得している為、無職なのは俺と兄さんだけだった。
そして世間一般に「冒険者」と呼ばれる人達は、村や街を転々と移動しながら世界中を旅する者達の事で、旅や生活に必要な資金などは、道中訪れた集落でクエストを受けて、モンスターを倒して報酬を貰って生計を立てており、その為、敵と戦い続ける事で「経験値」というものが溜まり、それが一定まで溜まると、今のカイルのようにクラスを習得出来る。
だが、自分の意思でクラスを選ぶ事は出来ない。誰がどのクラスになるかという事は、扱っている武器によって決まるとか、その人の性格によって決まるとか、様々な迷信が飛び交っているが、結局は神のみぞ知ると言ったところだ。まあシオンのような、一部特殊な例もあるが。
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