お金の神様

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お金の神様

その夜、健二は眠りにつくと夢をみた。 『これ、青年。』夢の中で健二は後ろから誰か  に声をかけられた。振り替えると、背の低い白髪のおじいさんが立っていた。知り合いに心当たりはない。 『おじいさん、誰ですか?』健二が尋ねると、おじいさんは『私はお金の神じゃ。』と胸を張った。『お金の神?』意外な返事にあっけにとられる健二をよそに、おじいさんは続けて話しだした。 『青年はお金持ちになりたいんじゃろ。青年がお金が欲しいと叫びまくっているのを空から見ておったんじゃ。』健二は、自分の間抜けな姿を、いくら白髪のおじいさんが相手でも、他人に見られていたということを知り、赤面した。 おじいさんはそんな健二を気にせず『わしは神様じゃからお前の願いを叶えてやろう。これを青年に与えよう。』おじいさんは健二の方にお札の入ったオレンジの財布を差し出した。 とまどいながらも健二が財布を受けとると、なかには一万円札が五枚ほど入っている。五万円でももらえれば健二にとってはありがたい金額ではあるが、お金持ちというにはほど遠い。 健二の疑問が伝わったのか、おじいさんは信じられないことを口にした。 『その財布は使っても使ってもお金が増えていく魔法の財布じゃ。』 『まさか!ありえないですよ!』健二は思わず声を挙げるが、おじいさんは動揺することもなく、『まあ、そのうちわかるようになる。』と一言を残し、健二のもとから去っていってしまった。 取り残されて、ぼうぜんと突っ立つ健二の手の中にはおじいさんから渡された五万円のはいった財布が残されていた。
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