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プロローグ
時は西暦2405年――。
地球という星では世界の覇権を争う大規模な戦争が起こっていた。
世界各地で起こった戦争は次第に方向性が変わり、とある二つの帝国が争う形に発展した。それは東側と西側の国々がそれぞれの帝国を支援し、80年間という長い争いであった。
西側はアイリス帝国と呼ばれる帝国で約50か国が支援をしていた。
対する東側帝国はモンフィス帝国と呼ばれ約60か国が支援した。
どちらの帝国も勢力としては互角で一歩も譲らない争い。
2045年のシンギュラリティ、つまり技術特異点を超えてからもう300年を超えた時代に行われる戦争は第一次世界大戦、第二次世界大戦とは比べ物にならない規模と時間に新戦術・新兵器……。
2045年問題という技術特異点で人間を超えたAIの戦術導入が戦争の在り方を根本から変えたのだ。
AIによる戦争は陸海軍の戦闘において人間の犠牲が出なければいい。
この考え方は2100年を超えてから変わっていない。
だがどうだろう。人間の被害を出さないとして陸は自律二足歩行ロボットや無人戦車、海上では無人旗艦を主として陣形を組む無人軍艦の数々、空ではついに透明化技術が開発され、無人戦闘機の中には姿を消すことができる機体も存在した。
すべて無人――。
だがその考えが甘かった……。
アイリス帝国とモンフィス帝国の80年戦争。
あくまで犠牲の中心は人間。その他の動物は含まれていない。たちまち砲撃や爆撃が起これば自然は崩壊し、その破壊規模で地形はたちまち姿を変えた。
人間はロボットを便利な道具としか考えていないのだ。人間が前線に立たないだけで一体どれだけの資源を消費し、技術の結晶と呼ばれた兵器たちをどれだけ鉄くずにして捨てることだろう。
そして民間人。
AIには情なんてものは存在していない。最短最速で自分の脅威となるものを潰す。それが周りにどれだけの損害やただ巻き込まれただけの民間人を巻き込むこととなったとしても敵を倒せるのであれば躊躇なく実行する。
アイリス帝国のかつての国王、ユーグネー国王は言った。
「戦争では人間の犠牲は最小限のものになるよう、戦争を考えるべきである」
聞こえはいい。
しかし、民間人とは言っていない。この言葉の奥にあるものは兵士のことだ。
民間人が巻き込まれることなど仕方ない。だがそこが戦場になることを事前に警告するから逃げてくれ。
そういうことだった。実際警告はされた。逃げる者もいれば逃げ場がすでにない者、もっとも多かったのは逃げた先で救われることがなく息絶えた者たち。
一方、モンフィス帝国のかつて国王であったエヴァンズ国王は言った。
「兵士の犠牲は出さない。民間人の犠牲は我々がどうにかできることではない。逃げてほしい」
両国の国王とも同じようなことを言っている。
民間人の犠牲は巻き込まれた方が悪い。巻き込まれて命を落としたくなければ逃げろというわけだ。
そんなやり方では当然不満が出る。
80年間不満は絶えなかった。
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