彼の彼女はヴァイオリン

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 やっぱり誰もいない教室じゃないと謝れそうになくて、私は毎日放課後の教室に通うことにした。  でも『だいちゅう』は私を避けてるのか、その週はとうとう放課後に会えなかった。  私は仕方なく土日も学校に行って、日曜日の教室でやっと『エリザベス』を練習中の『だいちゅう』に出くわす。  『だいちゅう』は心底嫌そうな顔で私を見ると、尖った声で言った。 「また来たのかよ」  相変わらずの態度でやっぱりムカつくけど、私は怒ったらいけないと自分に言い聞かせた。  一応謝りに来たんだから、ケンカを売るのはまずい。    私は心の中で大きく深呼吸して怒りをやり過ごしてから、思い切って言った。 「この間はごめんね」 「……別に」  『だいちゅう』は私から逸らした視線を『エリザベス』に落とすと、落ち着きなく『エリザベス』を弄り始めた。 「……いい加減俺に付き纏うのやめろよ。すげえ鬱陶しい」 「だったら一曲弾いてよ。それで私の気が済むんだって言ってるじゃん」 「前にも言っただろ。やなんだよ。デリカシーねえな」  『だいちゅう』はあくまで頑なで、しかも口が悪かった。  何でここまで言われないといけないんだろう。  さっき謝ったばかりだけど、ちょっとキレそうになる。 「『エリザベス』弾いてって言ってるだけじゃん。何でデリカシーどうこう言われないといけない訳?」 「『エリザベス』、俺の彼女だから」 「へえ」  よっぽどヴァイオリンにハマッてるんだなあと思ってると、『だいちゅう』の目が一層冷たくなった。
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