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『お世話になりました。私たちを見守ってくださって、どうもありがとう。』
それは、自分に向けられた言葉だろうか。だが生憎、自分には言葉を返せる口も笑みを返せる顔もない。
だからせめて、この女の亡骸をもう少しの間静かに眠らせてやることにした。何、ナースコールも機械もベッドも、全ては自分の一部である。
女は今度こそ嬉しそうに天へ昇った。
これは、とある夫婦の死を看取った自分の……301号室の話である。
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