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「あ……また届いてるわ。」
白いベッドの上、ふと目を覚ました女が嬉しそうに声をあげる。視線の先にあるのは白い花。細長い花弁と、微かに漂う落ち着く香りが特徴的な花だ。
女は管の刺さった腕を緩慢な動きで持ち上げると、その青々とした茎にそっと触れた。
「もう、また誰が届けてくれたのか見れなかった。今日は起きていようって頑張ったのに……だめねぇ。」
落胆するような台詞とは裏腹に、その声は明るく弾んでいる。しかし、それも当然か。
ここは病院、小さな病室。そこでひっそりと寝起きを繰り返すこの女のことを見舞う者は、ただの一人としていない。
毎週届く、この一輪の花を除いては。
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