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その次の週、女はいつもより2時間早く眠りにつき、その分早く起きた。
「よかった、まだ届けられてないわ。今日こそ、届けてくれる方にお礼を言わなきゃ。」
どうやら花を届ける人に会おうとしているらしい。多分会えないと思うが。すると案の定、昼過ぎには待ちくたびれた女の目が閉じられ、その隙に花が届けられた。
数分後、女がハッと目を覚ます。そして辺りを確認。美しい青い花を視界に捉えて、僅かばかりの落胆を見せた。
「あぁ……なんで寝ちゃったの。あと少しで会えたかもしれないのに…。」
しょうがない。相手は女が席を外しているか、眠っているときにしか来ないのだから。
細い腕が、シーツの上に置かれた花を手に取る。今日は青い花だった。大きな青い花弁に、黄色と白の模様が映える。
「んー…カキツバタね。花言葉は…あら、幸せは必ず来る。素敵だわ!」
先程までの落胆はどこへやら。嬉しそうに笑った女は、この為だけに買っておいた花瓶に花を生けた。
「この花があるから、私は頑張れるわ。でも、だからこそ…会いたいわ。」
まだ見ぬ人に向けられたその言葉に応えるように、生けられたカキツバタがふるりと揺れた。
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