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女は起き上がることが出来なくなった。年齢のせいかほかの病気も併発してしまったようで、女の腕から伸びる管の数とベッドを取り囲む機械の数は増えていく一方だ。
「困ったわねぇ…これじゃ、お墓参りにいけないわ……。」
心底悲しそうに女が呟く。暗い雰囲気の病室で、届けられ続ける花の色だけが不自然に明るい。花の数は増え続け、今や窓辺は隙間無く埋め尽くされている上に花を置く専用の机まで置かれている。それももうすぐいっぱいだ。
「…病室でも、花に囲まれていられる、っていうのは…嬉しいわねぇ……。あの人も私も、花が大好きだったから……。」
懐かしそうに言いながら、女はふっと目を閉じた。すると、それを見計らった花がふわりとシーツに置かれる。
今回は白い花だ。ハンカチをひっくり返したかのような変わった形をしている。
数分後に目を覚ました女はその花を見て、何かを理解したかのように目を見開いた。
「…寂しくなったんですか?ええ、いいですよ。私も、あなたがいないと寂しいんです。」
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