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次の日女は旅立った。
いや、その表現は正しくない。
女は連れ立った。
その日は“たまたま”ナースコールも周りの機械も壊れていて、女は静かな中で眠りについた。相変わらず周りの花は美しく咲き誇っていて、まるで棺桶のなかにいるような華やかさだった。
さてその女だが、現在自分の体を見下ろしてコロコロと笑っている最中である。
『まあまあ、素敵だわ。大好きな花に囲まれて、大好きな人と旅立てるんですもの。』
女は幸せそうに笑う。その隣には、5年前に死んでしまった女の夫が寄り添っている。単刀直入に言おう。花を届けていたのはこの夫だ。そしてこの女を死なせたのも、この夫である。
『…サナエ。その…僕は、君を……。』
『あら、そんな顔しないでくださいな。きっと、見てられなかったのでしょう?貴方と同じ病におかされていく私を。』
そういった途端、夫の顔がくしゃりと歪む。そうだ。夫は最初、女に早く良くなって貰いたかった。しかしその病気が治りにくいことや、闘病に苦痛が伴うことを身をもって知っていた。
だからいつしか、治ってほしいという願いから贈られていた励ましの花から、こちらに来てほしいと言う嘆願の花に変わっていった。こいつが重度の愛妻家で、女と共にいたいと願ったことも影響しているだろうが。
『一度亡くなってしまえば、こんなに楽になるんですねぇ。貴方も待っていてくれたことだし、早く死んでしまえばよかった。』
『僕がいうのもなんですが…そういうことを言われると切ないですよ。』
『あははっ、本当にどの口がいいますか!』
仲睦まじく言い合いをしながら、二人は空に昇っていく。だが途中で、女の方がハッとしたようにこちらを振り返っていった。
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