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彼女は、ヒョットして...あのミヨさん...
わたしのおばさんでサララ達のお母さん...?
わたしに何の関係もない所へスリップするはずがない。
間違いない...
わたしは口を手で覆い再びペタリと冷たい床に座り込んでしまった。
その時、男が振り返りわたしと目があった。
しかし神経質そうに服を着て髪を手櫛でまとめながら、
「なあ、ミヨさんもう少し仲良くしようよ。
これから死ぬまで僕と一緒なんだし...
毎日何度も身体を重ねるんだ...
ボイラーに火を入れとくからシャワーでも浴びればいい。
それから食事にしよう。両手もこれから自由だ。」
男は縛り上げた手首のロープを外しながら親しげに柔らかく話していたが、その裏っ側には残忍で冷たい響きが残っていた。
男にはわたしの事は見えていない。
さっきからそう感じていたがやはりそうだった。
男はわたしの前を横切り大きめの扉を開けて周りを見渡し確認しながら部屋を出て行った。
外から鍵を掛ける音が響き足音が遠ざかった。
わたしは恐る恐る彼女の側へ近付くと身体を震わせながら泣いているのが分かった。
しかも地の底から聞こえて来る様な...
唸る様な声...
よく見ると小さな血の塊を愛おしそうに掌で包み込んで囁いた。
「わたしの...赤ちゃん
ごめんね、守れなくて
許してくれなくていい...
わたしの赤ちゃん...
ごめんなさい。」
美代はうずくまり肩を震わせていた。
わたしも思わず涙が溢れた。
そして彼女のその震える肩を抱きしめようとしたが触れる事は出来なかった。
わたしは途方に暮れながら無力感と敗北感が一気に押し寄せて来るのを感じた。
そしてあの男への憎悪が膿のように溢れた。
「サララ、サラサ...わたしどうすればいい?
お願い...助けて...」
止めどなく流れる涙を拭う事なく呟いた。
すると突然 掌に冷たい彼女の皮膚を感じた。
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