長谷部兄弟

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長谷部兄弟

以前 わたくしの簡単な身上話を致しました。しかし身内の事はあまり知られたくなくて詳しい事は控えておりました。 近頃 サララお嬢様の状況が目まぐるしく変化して、どうやらわたくしとの関係が明らかになるのも時間の問題です。 もうそろそろ皆さんにお話する時期が来たのかもしれません。 私の家は貧しく子沢山の大家庭でした。 姉が2人、弟が3人そしてわたし、両親に父方の祖父祖母、合計10人がひしめき合って長屋生活をしておりました。 しかも弟の1人は私と双子です。 若い頃から私とそっくりでしたが30になる前に行方不明となりました。 彼は小学生の頃から人とは違う性癖があり女の子に異常な執着心を持っていました。決定的な事件を起こしたのは中学の時、女子小学生を連れ回して家で性的なイタズラをしている所を姉に見つかり大事になってしまいました。公にはならなかったものの警察、学校、被害者の両親などうちの両親は仕事に行けないほど振り回されたようでした。そのうちに噂が広まり両親は仕事を失い、わたし達子供も小さいながら何とも肩身の狭い思いをいたしました。それから生活保護を受けるまでになってしまいました。 姉2人と弟2人は別々の親戚の所へ預けられて、私と双子の弟は今まで通りの生活を始めました。 弟は頭脳明晰で私と違ってどの教科も満点を取る秀才でした。 地元でも有名な進学校へ入学すると女性への性癖は表面的には落ち着いたように見えましたが、執着や興味は心の深い所で地層のように固く降り積もって何かのキッカケでテンションが開放されの大事件を起こす事に繋がりはしないかといつもヒヤヒヤしておりました。 わたくしはと言えば、全くと言っていいほど女性には関心がなくパーソナルコンピューター漬けの毎日を送っておりました。 受験の頃になるとわたしも弟も受験費用を捻出するためにアルバイトと学業の日々を送りました。 高校の頃は全国模試で常に5本に指に入るくらいになっていて、弟は東京国立大学に入学し、わたくしは地元の京都国立大学へと進み、弟は上京しお互い別々の生活が始まりました。
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