武 堅治

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武 堅治

弟の名... 武(旧姓:長谷部)堅治 大学卒業後アイドルを発掘するスカウトマンの仕事についた。 同級生達は彼の行動には全く理解できずにいたが、いずれ嫁の会社に役付で入るのは間違いないと噂した。 会社からは経理全般を任せたいと要望があったようだが本人が基本の仕事から身につけたいと、言わば強引にスカウトをやり始めたようだった。 毎日送られてくる手紙や写真を確認しては興味ある娘に面接を行っていた。 きっと彼にとっては天国のような仕事だったのかも知れない。 ただそのままでは済まなくなるのが彼の性癖。 タウン誌に載ったある女子中学生に一目惚れした武は足繁く彼女に気付かれないようにまとわり付き行動を調べ盗撮を繰り返した。 彼の所属する芸能プロは全国でも名の知れた会社なのでコソコソする必要は何も無いのだが、そうする事が彼の欲望を強く刺激したようだった。 仕事の枠を超えた彼女への思いは日に日に高まり、それと反比例するように行動は深い闇のように静かに、盲目的に潜航して行った。 何度か彼女の両親が経営する店に行き名刺を置いては来たが、本人が居たり学校から帰って来たりすると言葉をかけるでもなく、そそくさと立ち去った。 そのうちにその娘は多くの芸能事務所の目に止まるようになり彼女の身辺はにわかに騒がしくなり始めた。 武は次第に焦り始めた。自分だけの楽しみとして密かに見守っていたものが急に掌からこぼれ落ちて行くような気がした。 彼女が有名進学校に入学すると武はもう見ているだけでは収まらなくなって行った。 早く自分だけのものにしなければと気持ちは焦った。 そして彼女を自分のモノにするために独り善がりの身勝手な計画を実行した。 武にしてみれば育てた女をモノにする事に全く罪悪感など無く、当たり前の行為だと思っていた。 ただ最初は驚くだろうから彼女の意識を奪ってゆっくりと痛まないように身体を開かせる事を考えていた。 既に狂ってしまった発想は常軌を逸している事さえ盲目となってしまっていた。
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