悠木美代

1/3
前へ
/36ページ
次へ

悠木美代

美代は浅草の和菓子老舗『悠木屋』の長女として生まれた。 兄の純次は3つ年上で小学校の頃はいつもお寺の境内や公園などで一緒に遊んだ。近くには有名な商店街があり様々な商品を扱う観光客向けのお店が建ち並びいつも多くの人で溢れていた。 美代は愛らしくお茶目で商店街の人々のマスコット的存在になっていたので彼女がお店に現れるとお客にも販売員にも悠木屋さんちのミヨちゃんとして可愛がられ必ず手土産を持たされた。 彼女が家に帰ると母親はお土産を確認して貰って来たお店へ菓子を持たせて返礼した。そのような事が続き店同士の繋がりを深くしてより一層ミヨの存在が広まって行った。 兄の純次が中学生になると妹との時間は極端に減っていき彼女は1人で遊ぶ事が増えた。しかし商店街で多くの知り合いがいたので寂しさを感じた事は1度もなかったしお店によっては簡単なお手伝いをかって出たりした。 兄は放課後、店の手伝いをさせられるようになっていた。もちろん本人が望んだ事ではなく悠木屋の長男は代々やってきた事だった。美代もたまに手伝ったが悠木屋の隣りにある”ユウキサラヤ”の洋食店を手伝うのが好きでどちらかと言うとそこにいる事の方が多かった。 中学生になると可愛さが増して男子の目を引くようになったが、それと共に自我が目覚め人目を気にするようになった。 女子も男子も早いか遅いかの差はあっても思春期は総じてそんなものである。店に立つのさえ嫌がるようになって厨房での手伝いが多くなった。 商店街に行く頻度も減って逆に『ユウキサラヤ』へ商店街の販売員が食事を兼ねて訪ねて来る事が多くなっていた。 美代は高校受験を控えた時期になると店の手伝いは殆ど出来なくなったが、この頃から頻繁に芸能関係のスカウトが来るようになっていた。当然彼女は受験生でもあるので話は一切聞かなかったしそのつもりもなかったが、以前 盗撮された写真が無断で雑誌に載り話題となり始めていた。 第1志望の都内の高校へ入学した美代だったが、2年生の時 人生を左右するある事件に巻き込まれた。 その頃彼女は可愛さよりも美しい女性に成長して誰もが振り向くようなオーラを放つ日本人離れした顔と気品を兼ね揃えていた。 高校生活が始まると声掛けやスカウトが日増しに多くなっていた。 その中で中学の頃からしつこくやって来ていたスカウトマンがストーカーになり彼女を襲ったのだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加