実家

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2人は玄関の呼び鈴を鳴らした。 店の入口とは少し離れた所にあるので悠木屋に関係ある人しか知らなかった。 桜子の後に付いてリビングに入った2人はペコリとお辞儀をすると両親の強張った顔はスーッと赤らんだ。 父親は無言のままソファに座る様に手招きしたが、その顔は無表情で漠然とした沈黙の中にいた。 「...あっ紹介するね。 分かってるとは思うけど... 髪が長いほうがサララで金髪がサラサ...」 桜子はいつもと全く違う両親の態度に驚き変な紹介をしてしまった。 2人は自分の名を名乗り軽く挨拶したが、それでも両親は相変わらず遠い目で2人を凝視していた。 「父さんったら何ボンヤリしてんの、母さんも! 2人に失礼だよ。」 桜子は堪らず両親に言った。 「ご...ごめんなさいね、ビックリしたのと昔を思い出して...ゴメンね。 あなた...何かお話しになって... ちゃんと。」 母親は目頭を押さえながらやっとの思いで父親に言葉を振り絞った。 「君たち双子の姉妹って訳じゃないよね? あまりにも似すぎて... あ! いやいや、ゴメン... いきなり失礼な事聞いっちゃったね。 頭が混乱してしまって... サラサさん...には先ほど初めてお会いしたけれど、実はサララさんとは初めてじゃないんだよ。」 「はい、今お会いして思い出しました。 わたしがデビューしてすぐの頃でした。 渋谷の事務所に来て頂いた...7年前の4月です。 ええ...しっかり覚えています。 わたしの両親の事やどこで生まれ育ったのかと... お聞きになりました。 帰り際に他人とは思えないからずーっと応援するよ... って言って頂きましたよね。 あの頃は子供でしたし業界の事も分からなくて... でも知らない方々に見られて応援して頂くお仕事だから中途半端な気持ちじゃ駄目だって...しっかりしなきゃって目が覚めた思いでした。 あの時はほんとありがとう御座いました。」 サララは小川の水が流れるように話した。
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