意志疎通ブレスレット

12/23
243人が本棚に入れています
本棚に追加
/391ページ
「今夜、あの人がやってきても、騒がずに大人しくしてるんだよ」 布団に入る前にアスカはそう言ったけれど、僕は返事をしなかった。 同じ布団で一緒に寝ているけれど、僕はアスカから少し離れていた。 + 扉を開ける音が聞こえた。 やっぱりまた、あいつがやってきた。 アスカもずっと起きていたみたいで、すぐに音に気が付いたらしい。 僕はまた、急いで机の下に隠れた。 足音が近付いてきて、僕達の寝ている和室の前で止まった。 障子が開く音がする。 「……人の家に勝手に上がり込んで、何をやってるんですか?」 いつの間にか立ち上がっていたアスカが、電気を付けて、あいつに言った。 「誰だ?……ああ、お前、確か」 アスカに向かって、あいつはそう言った。 お酒の匂いが酷い。 「帰ってもらえますか?これ、不法侵入ですよね。二度とここには来ないでください」 アスカがそう言った瞬間、ものすごい音がした。 僕の潜り込んでいる机を、あいつが思い切り蹴ったんだ。 僕はブルブルと震え上がった。 「ふざけんな!このアマ!」 机の下から少しだけ顔を出すと、あいつがアスカの服を掴んで殴りかかろうとしているのが見えた。 「やめろ!」 僕は咄嗟に飛び出して、あいつに体当たりをしていた。 だけど、あいつはびくともしなかった。 「ああん?お前、何で喋ってんだ?」 「アスカに意地悪するな!出てけ!」 「どけ、チビ!」 あいつにお腹を蹴られて僕は壁際に吹き飛ばされた。 「ケンタ!!」 アスカがすぐに駆け寄ってきて、僕の体を守るように(おお)い被さった。 「テメーら、ぶっ殺してやる!」 あいつはズボンのポケットからナイフを取り出して、アスカの背中目掛けてそれを振り下ろした。 「やめてよ!」
/391ページ

最初のコメントを投稿しよう!