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「今夜、あの人がやってきても、騒がずに大人しくしてるんだよ」
布団に入る前にアスカはそう言ったけれど、僕は返事をしなかった。
同じ布団で一緒に寝ているけれど、僕はアスカから少し離れていた。
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扉を開ける音が聞こえた。
やっぱりまた、あいつがやってきた。
アスカもずっと起きていたみたいで、すぐに音に気が付いたらしい。
僕はまた、急いで机の下に隠れた。
足音が近付いてきて、僕達の寝ている和室の前で止まった。
障子が開く音がする。
「……人の家に勝手に上がり込んで、何をやってるんですか?」
いつの間にか立ち上がっていたアスカが、電気を付けて、あいつに言った。
「誰だ?……ああ、お前、確か」
アスカに向かって、あいつはそう言った。
お酒の匂いが酷い。
「帰ってもらえますか?これ、不法侵入ですよね。二度とここには来ないでください」
アスカがそう言った瞬間、ものすごい音がした。
僕の潜り込んでいる机を、あいつが思い切り蹴ったんだ。
僕はブルブルと震え上がった。
「ふざけんな!このアマ!」
机の下から少しだけ顔を出すと、あいつがアスカの服を掴んで殴りかかろうとしているのが見えた。
「やめろ!」
僕は咄嗟に飛び出して、あいつに体当たりをしていた。
だけど、あいつはびくともしなかった。
「ああん?お前、何で喋ってんだ?」
「アスカに意地悪するな!出てけ!」
「どけ、チビ!」
あいつにお腹を蹴られて僕は壁際に吹き飛ばされた。
「ケンタ!!」
アスカがすぐに駆け寄ってきて、僕の体を守るように覆い被さった。
「テメーら、ぶっ殺してやる!」
あいつはズボンのポケットからナイフを取り出して、アスカの背中目掛けてそれを振り下ろした。
「やめてよ!」
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