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「金満先生?どうかされたんですか?」
その声を聞いた金満はすぐに力を緩め、私から距離を置いた。
扉が開いたのと同時に、新任男性教師の若井が教室の中を覗き込んできた。
「美術室の前を通りかかったら、叫び声が聞こえたものですから。何かありましたか?」
「ああ、いやいや!ご心配なく。
真面目に授業を受けない生徒を少し叱っていただけですよ」
違う。
「そうでしたか。では僕はこれで」
扉の閉まる音が、静まり返った部屋に響く。
「さあ、早く続きを描きなさい」
ずっと触られている訳ではない。
ふとした瞬間に、抱きつかれたり触られたりするのだ。
+
中学二年生の時の担任も金満だった。
三年生になったある日、お互いが椅子に向かい合って座り進路の話をしている時、急に膝を触られたのが最初だった。
何が起こったのか、意味が分からなかった。
『教師が生徒の体に触った』
実際に体験するまでは有り得ない事だと思っていたし、考えた事もなかった。
何もなかったかのように話を続ける金満を見て、驚いた自分の方がおかしいのかと思ってしまった。
だけど、この時に何も言えなかったから段々エスカレートしていったのだと思う。
抵抗すると、肩をとても強い力で何度も叩かれたりもした。
叩かれた箇所は、次の日に痣になるほどだった。
何故、大人である教師がこんな事をするのか分からなくて、悔しくて、悲しくて、情けなかった。
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