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選択授業が終わり、教室に戻る。
次はHRだ。やっと家に帰れる。
だけどHRには金満がやってくる。
「早く席に着きなさい。はい、号令は……」
担任は教室では何もしてこない。
友人の亜紀に見られたら、他の教師に報告されるとでも思っているのだろうか。
この時の私には『他の教師に報告する』という選択肢はなかった。
というか、思い付かなかった。
只々どうしていいか分からない、十四歳の子供だった。
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帰り道、亜紀と途中で別れた後、伏し目がちに一人で自宅に向かう。
また来週も触られるんだろうな。
学校に行きたくない……。
友達と一緒にいる時は楽しいのに。
「そんな風に伏し目がちで歩いていたら、目の前にある素晴らしい景色の数々を見逃してしまいますよ」
驚いた私は声の方に顔を向ける。
スラッとしたスタイルの、中性的な顔立ちをした男性がそこに立っていた。
「美織さん、お店の中を見ていかれませんか?
当店の商品は、きっとあなたのお役に立てるはずですよ」
どうして私の名前を?
いつもと同じ道を歩いて帰っていたはずなのに、そこには見覚えのない建物があった。
いつの間にこんな店が出来たんだろう?
今朝だって同じ道を通ったはずなのに。
「あなたはいつも下を向いているから気付かなかっただけですよ」
私は心の声を実際に出してしまっていたのだろうか?
不思議な男性の顔をじっと見る。
「さあ、せっかくなのでお店の中へ」
思い切り怪しい……。
そう思い、まばたきをした次の瞬間、私は既に店の中にいた。
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