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次の日の朝。
登校中の自分の鞄に付けたストラップが、歩く度に小さく揺れる。
結局、言われた通りに付けてきちゃった……。
でも本当に大丈夫なのかな。
後でとんでもない金額を請求されたりして。
あのお店を見つけたら、ちゃんと返さないと。
「美織……、あんたさっきから何をブツブツ言ってんの?怖いんだけど」
いきなり視界に現れた亜紀に驚く。
「わっ!びっくりした……。私、声に出してた?」
「『とんでもない金額を請求』……とか。
まさか眠れない原因はそれ!?
一体何を買ったの!
引かないから正直に言いなさい!」
「何も買ってないよ!
しかも昨日はぐっすり眠れたし」
「そうなんだ?良かったぁー!!
あんた何か今日、顔色が明るいもん」
じゃれあっている内に、亜紀は何かに気が付いたらしい。
「このストラップ、すごく可愛いじゃない!
昨日まで着けてなかったよね?買ったの?」
「買ったっていうか、貰ったっていうか……」
説明が難しい。
いくら友人とは言え、目の前にいきなり店が現れて消えたなんていう話をしたら、また心配を掛けてしまう。
言葉に詰まっている私を、亜紀は目をキラキラさせながら見ていた。
「もしかして……、彼氏とか!?いつの間に!?おめでとう!今度、紹介してよね!」
「だからそんなんじゃなくって……」
「男の人に貰ったんじゃないの?」
「そう、男の人。……だけど、違うんだって!」
亜紀からの質問攻めは止まらない。
そんなやり取りを、少し離れた場所から金満が見ている事に全く気付いていなかった。
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その日の放課後、委員会で遅くなった私は教室で一人、帰りの支度をしていた。
突然ガラッと開いた扉の音に驚いて、顔を上げる。
「まだ残ってたのか」
金満がニヤニヤしながら、太った体で扉を塞いでいる。
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